島耕作の作者が「育児に熱心な男は出世しない」とイクメン時代に異論。いや、そんな会社は生き残れないから。

サラリーマンの出世をテーマにした「島耕作」シリーズを描く人気漫画家の弘兼憲史氏が、『男の育児参加は出世に響く』と、近年のいわゆるイクメンブームを否定しました。

マンガ「島耕作」は1992年に連作がはじまり、課長島耕作、部長島耕作、取締島耕作、社長島耕作、会長島耕作など大きなスケールで展開し、コミックスの累計発行部数は約4,000万部。

仕事より子供の誕生日を優先する部下はいらない。

弘兼憲史氏の意見は、NEWSポストセブンに掲載されています。

“少子化時代、女性の社会進出が進む時代ゆえか、「男の育児」が礼賛される風潮だ。しかし、漫画家・弘兼憲史氏があえて異議を唱える。

昨今、子育てを熱心にやるイクメン会社員がもてはやされています。しかし現実には、仕事のできる人間というのは家庭では必ずしも好かれていないし、逆に家庭的で幸せなパパというのは会社ではそんなに出世しない、という構図があります。(中略)たとえば僕が上司の立場だとして、急遽、重要な案件が発生して緊急会議になるから残ってくれ、と部下に頼んだとします。その返答が「すみません、今日は子供の誕生日なので帰らせてください」だったとしたら、僕はその部下を仕事から外しますね

たとえ子供の誕生日だとしても会社の重要案件となれば、給料をもらっている以上、やっぱり会社を優先すべきです。子供の誕生日、あるいは子供の運動会程度のことで会議をすっぽかすな、とは言いたい。

『島耕作』作者・弘兼憲史氏「育児に熱心な男は出世しない」:NEWSポストセブンより一部引用”

仕事より家族を優先

考え方が古すぎて、今の時代にまったく合っていない。

この記事を読んだ直後の感想は、「……えっ、滅私奉公? 古っ!」です。

マンガ島耕作は、団塊の世代が活躍するバブル前の1980年代前半から描かれています(バブル期は1986年から1991年まで)。また、1980年以前はといえば、モーレツ・サラリーマン世代。敗戦国日本が1968年に世界第2位の経済大国へと登り詰めた高度成長期時代です。

とにかく戦後……いや、明治維新以降、太平洋戦争時を除いて日本の経済はほぼ右肩上がりに成長してきました。

それが遂に、1990年代より日本の経済が鈍化し、さらに2000年代後半より国の人口も減りはじめました。今は日本の近代史史上初の低迷時代なのです。

経済が右肩上がりの時代であれば、家庭より会社に尽くしても、その見返りは充分得ることができたでしょう。 会社が成長するのだから、社員は給与や賞与として報酬を受け取れます。しかも、終身雇用が当たり前だったので、生活設計も安心して立てることができ、家庭を守ることができたのです。

しかし、今の低迷時代においては、いくら会社に尽くしても報われるかどうかわかりません。先行きが不透明で、すぐに給与に反映されず、さらに言えば、会社の業績が悪くなれば、リストラや倒産も待っています。

そんな現代において、「家庭よりも仕事を優先せよ」なんて考えの上司や経営者がいる会社が、発展し、生き残ってゆくとは考えられません。なぜなら、そんな会社に優秀な人が集まってくるとは思えないからです。

少子高齢化が進み、人口および労働人口が減ってくる日本においては、これまで以上に「優秀な人材を確保すること」は企業にとって重要なことです。弘兼憲史氏がいう、仕事より子供の誕生日を優先する人は使いづらいという気持ちもわかります。でも、今の時代において、それでは人心を集めることが出来ないと思うのです。

「家庭より仕事」「家事と育児は奥さんに任せっきり」。家庭をないがしろにして会社に尽くしたあげく、会社が倒産し、家庭を守れず、家族からは愛想を尽かされる。父親は、そんなことにならないよう努力する必要があるのを、雇う側は忘れてはいけません。

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