女性は妊娠前から葉酸をサプリメントでも摂るよう推進、毎日400~800μg。米国予防医学専門委員会
最近の母子手帳「妊娠中と産後の食事」

「妊娠前・妊娠中は葉酸を積極的に摂るべき」というのは、最近ではよく知られています。葉酸を摂ることで神経管閉鎖障害や21トミソリー(ダウン症候群)など、生まれながら持っている病気、先天性疾患のリスクを抑えることができるとわかってきたからです。

【海外】1989年、葉酸が妊婦に必要な栄養素だとわかった

妊娠に葉酸が不可欠だと言われるきっかけになったのは、1989年、アメリカの医学誌が『妊娠初期に葉酸を摂ることで、神経管欠損の奇形の発生リスクが減らせる』と発表したことです。

卵子と精子が女性の卵管で出会って受精。1週間ほどかけて子宮へと移動し、子宮の壁に着床しますが、そのとき受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、まずは「脳」と「脊椎」を作ります。その際、おきた奇形を神経管欠損と呼んでいます。具体的には、神経が麻痺して身体が思うように動かない「二分脊椎症」、脳の大部分がない「無脳症」があります。

その後アメリカでは、1998年からパン、パスタ、米などの穀物に葉酸を配合するよう法律で義務化しました。現在、世界数十カ国で穀物食品への葉酸配合強化が実施されました。

【日本】2002年、ようやく母子手帳に葉酸摂取が明記

世界では、日常の食品に葉酸を配合するよう法整備まで行われていますが、日本では今にいたってもそのようなことはありません。

1999年、厚生労働省が妊娠期と授乳期に葉酸の摂取を呼びかけ、その後、2002年からようやく母子手帳でも葉酸の摂取が明記され始めました。

最近の母子手帳

二分脊椎など神経管閉鎖障害の発生を減らすためには、妊娠前から妊娠初期の葉酸の摂取が重要であることが知られています。

葉酸は、ほうれん草ブロッコリーなどの緑黄色野菜や、いちご納豆など、身近な食品に多く含まれています。日頃からこうした食品を多くとるように心がけましょう。葉酸の添付された食品やサプリメントもありますが、とりすぎには注意が必要です。

母子手帳「妊娠中と産後の食事」より

【海外】2003年、葉酸がダウン症予防にもつながると発表される

2003年には、世界五大医学雑誌のひとつである「ランセット(The Lancet)」で、『妊娠前から葉酸を摂っていると、ダウン症の発症をリスクを抑える可能性がある』との論文が発表されました。

抑える可能性があるということなので、確実とは言えないようです。そのためか、日本の母子手帳には、葉酸は神経管閉鎖障害に効果があるとは明記されていますが、ダウン症発生リスクを抑える効果があるとは書かれていません。

その理由は、おそらくダウン症などの染色体異常は妊婦の年齢によるところが大きいからでしょう。20歳代の若い妊娠で染色体異常が発生する確率は極めて低く、35歳頃を境に急増します。余談ですが、日本では高齢出産が増加傾向ですので、妊娠中に胎児由来の染色体を検査する新型出生前診断(NIPT)が注目されています。

主な染色体異常(先天性疾患)

  • 21トリソミー(ダウン症候群)
  • 18トリソミー(エドワーズ症候群)
  • 13トミソリー(パトウ症候群)

*18トミソリー、13トミソリーは特に症状が重く、流産したり、死産になる場合が多く、無事誕生しても寿命は数ヶ月から1年以内だと言われている。

【海外】2017年、アメリカで出産適齢期の全女性に葉酸のサプリメントを摂取するよう推奨

ここまでが、葉酸にまつわるこれまでの歴史。さて、いよいよ最新の情報です。アメリカで、葉酸の摂取を強化する動きが起きいます。

米国予防医学専門委員会(USPSTF)は10日、出産が可能な、または妊娠を考えているすべての女性に、葉酸サプリメントの摂取を推奨すると発表した。先天異常リスクを低下させることが目的だという。

(中略)

妊娠が可能または妊娠を計画している女性に対し、葉酸400~800マイクログラムを含むサプリメントを毎日摂取するよう呼びかけている。

緑葉野菜、マメ科植物、かんきつ類などの食物中に自然に含まれる葉酸は、胎児の脊椎や脳にある種の発達異常が生じるリスクを低減できることが、複数の研究で証明されている。

:AFPBB News

日本では、妊娠予定の女性に対して400μgの葉酸を摂取するよう、厚生労働省は推奨しています。

<厚生労働省推奨 葉酸摂取量>
・非妊娠の成人 – 200μg
・妊娠予定の女性 – 400μg

米国予防医学専門委員会では、その2倍の400~800μgを推奨しているのです。しかもその対象は、妊娠予定の女性というより、妊娠可能な全女性を指しているような表現です。

そもそも葉酸と妊婦に関しては、先に書いたようにアメリカの発表をきっかけに世界中に広まりました。妊娠前からの葉酸摂取は、今後ますます世界に広がってきそうです。

葉酸摂取、妊娠がわかってからでは遅い。なぜ妊娠前から?

卵子と精子であって受精し、子宮の壁に着床し、胎児になる前の胎芽(たいが)できる妊娠超初期は、妊娠の自覚症状がほぼありません。

妊娠0〜1週は、卵子がつくられて排卵する時期ですので、そもそも受精すらしていません。妊娠2〜3週で受精、着床。妊娠4週目頃から胎芽と呼ばれるものになり、脳や脊椎、神経がまずつくられます。

そんな妊娠4週目頃に、「あれ? 生理が遅れてる。妊娠してるかも!?」と思うわけです。

一般的に薬局で売られているドゥテストなどの妊娠検査薬には、「月経予定日の約1週間後から使用することができる」と書かれています。そのため、葉酸摂取で二分脊椎症や無脳症を防ぐには、妊娠検査薬で陽性反応が出てからでは遅いのです。

だから、妊娠の可能性がある、または妊娠の予定がある女性に対して葉酸摂取がすすめられているのです。

葉酸は血液をつくる働きがある

ちなみに、葉酸は血液をつくる造血作用もありますので、貧血が多かったり、生理がある女性にとっては、そもそも日頃から摂っておきたい栄養素でもあります。また、妊娠中は血液を通じてお腹の赤ちゃんに酸素や栄養素を運びます。妊娠超初期だけでなく、妊娠中、授乳中は欠かせない栄養素とも言えます。

最後に、葉酸を積極的に摂りたい方は、以下の記事に葉酸がたくさん含まれる食材・食品をまとめましたので、合わせてご覧ください。

葉酸が多く含まれている食材ランキング。妊活中・妊娠超初期から食べておきたい野菜と豆類。