「性行為については、親が教えないといけないの?」
「子どもに言いたくないし、話したくない!」
昨今「家庭で子どもに性教育をしよう」の風潮が高まっています。
ネットで話題になったり、そうした本も出版されているのですが、正直子どもに話すべきかどうか悩みません? だって、今の親世代が子どもの頃って、ほとんど親から性教育なんて受けていないですよね。小中学校の保健体育の時間に、ほんの少し習った程度です。
そんな私たちにとって、わが子に性教育をするなんて、とってもハードルが高い!
でもちょっと待ってください。素晴らしい本に巡り会えました。子どもに性教育をする前に、まず親自身の価値観や知識をグーンとアップデートすることができる読みやすい本です。
子どもに、いきなりセックスの話はしちゃダメ!
わが子からこんな質問を受けたら、パパ・ママはどう答えますか?
このとき、「お母さんとお父さんが結ばれて……」と性交渉の話をしたり、「精子と卵子がくっついて……」と受精・着床の話をしたりすべきと考えがちです。
ここでストップ!
未就学児や小学校低学年の子どもが、セックスや妊娠について知りたいと思い質問したのでしょうか。
今回ご紹介する本「パンでわかる包括的性教育」は、そうした親の不安を解消してくれるだけでなく、子どもに伝えるべきもっと大切なことをわかりやす〜く教えてくれたのです。
質問「赤ちゃんはどこから来るの?」
本書にこんな解説がありました。引用・抜粋しながらご紹介します。
子どもが、赤ちゃんの誕生に興味津々なのはあたりまえなのです。それは、「なぜ、お空は青いの?」「どうして夜は暗いの?」と同じくらいに、子どもにとっては自然な疑問なのです。
(中略)
子どもは、生殖について知りたいと思っているというよりも、まずは自分のルーツを知りたいと思うと同時に、親と自分とのつながりを確認したいという思いの方が強いのです。
P.105「自分の始まりを知る」より
「愛する」とは何か?
また、性教育の基礎部分として「愛」について書かれているページもありました。
「愛する」ってどのようなことでしょう? それは相手を大切に思うことです。とてもシンプルでしょう。
P.83「愛情の形はいろいろ」より
愛するとは、相手を大切に思うこと。
本当にシンプルですね。
大人でもつい勘違いしたり暴走したりする人もいますが、自分の願いを叶えるための自己中心的な行為が愛ではありません。相手を大切に思う、その行為が「愛する」ということなのです。
誰かが愛するものを、一方的に否定してはいけない
また、本書には「愛にはいろいろな形があり、人それぞれ違う」とあります。
相手を大切に思うことが「愛する」なのですから、その対象も様々ですよね。親、子ども、友人、恋人、ペット……。また、生き物以外にも、本、写真、人形など、自分が心を込めて大切にしているものが愛する相手であると書かれています。
そこで重要なポイント!
誰かが愛するものを一方的に否定するということは、その人自身を否定していることだと思います。
P.83「愛情の形はいろいろ」より
実は、僕は「男は男らしくあるべし!」と言われる環境で生まれ育ちました。男女の役割が明確なお祭りが盛んな町で生活し、好きな音楽「レゲエ」でも昔はゲイバッシングの曲が多くありました。
そんな精神が根底にあるため、昨今よく議論の対象になっているLGBTQに対して、もろ手をあげて賛成とは言いづらかったのです。口に出して批判することはありませんが、心が追いついていませんでした。
でもこの本を読み、ハッとしたのです。
人が大切に思うものを、僕にそれを否定する権利はない。それどころか、それを認めないなんて、人として器が小さすぎる……。
僕は今、そう感じています。
「愛は愛」ですね。
なぜ、パンで性教育なの?
そうそう、この本を見て「なんで性教育の説明にパンなんだよ」と思っている方もいるでしょう。
これはパンであるからこその、伝わりやすさ・理解しやすさがあるのです。
名シーンはたくさんあるのですが、僕が特に好きなのは「自分らしいサンドイッチ」。
サンドイッチには、柔らかいソフトパンもあれば、硬いハードパンもある。加えて、それに挟む具材も多種多様。いろいろなサンドイッチがあります。
人も、それと同じ。
人ぞれぞれは、見た目が違う。それに加えて、ワクワクする服を着たり、何かを愛する気持ちをもったりして、自分という人ができる。いろいろな人がいるのです。
そう思うと、人と違うことこそが「素敵」「かっこいい」「面白い」と思えるようになってきます。不思議!
子どもの性教育の前に、親が読んでおきたい本
今回ご紹介した「パンでわかる包括的性教育」は、親のための本です。
記事冒頭でも書きましたが、これを読むことで親として自分自身の価値観や知識がアップデートされました。「性教育というのは、男女の身体の違い・性行為・妊娠・出産などを具体的に説明するだけではなく、子どもの心を成長を、寄り添いながら育むのが大切なんだな」と、感じています。
本書を一言で紹介するなら、
「親にとっての、子どもの心の教科書」
です。
夫婦でシェアしつつ、手元において繰り返し読みたいと思います。夫婦間においても、思いやりが深まるきっかけが得られそうです。
最後に、出版社・小学館クリエイティブさんの公式プレスリリースをご案内します。僕の説明だけでは不足も多いと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
パンでわかる包括的性教育
株式会社小学館クリエイティブは、おもに未就学児の親を対象に「性教育」のハードルをグッと下げた書籍、『パンでわかる包括的性教育 ~入学前までにやっておきたい!将来のための30のこと~ 』を4月14日に発売します。
入園、進級などによって子どもの行動範囲が広がる新学期、不安に感じる親にピッタリの本です。
「性教育」に悩む親に向けた本
“家庭でできる性教育の本”がここ数年相次いで出版されています。しかし、親世代に根深く残る、性=恥ずかしい、タブーといった壁や、どう教えていいかわからないという理由から、子育て世帯の約8割が性教育を「実践していない」「必要性を感じているが実践していない」と回答しています(※株式会社ネクストビート「子育て世帯の家庭での性教育アンケート調査結果」より)。
本書で取り扱う「包括的性教育」は、からだの発達や生殖のしくみなど、一般的にイメージする性教育の内容だけではありません。多様性や人権、ジェンダー平等を知ることから始まり、「自分も、自分以外の人も大切にするための関係性の築き方や、コミュニケーションの取り方」を学びます。小さい子どもでも性犯罪に巻き込まれる可能性があることから、世界では思春期からではなく幼い頃から身につけておきたいスキルとして主流になっています。
本書は、「包括的性教育」のキーワードである、人種、性別、性的指向、ルッキズム、家族の形、価値観などのあらゆる多様性を、いろいろな形や大きさがある多種多様なパンに置き換えて紹介する、これまでになかったユニークな性教育本です。世界のスタンダードとして認められている、ユネスコ編『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』の翻訳者、浅井春夫先生監修のもと、何から始めたらいいかわからない親のために、とくに大切な30項目にしぼって紹介しています。
SDGsの持続可能な開発目標のように、包括的性教育の30項目を30種類のパンで紹介。
焼き色やミミの厚さが違う、それぞれの個性をもった食パンのイラストとともに、親が日常のなかで子どもの個性を受け止め認めることの大切さを解説。
みんな違っていい!個性こそ強みであることを、いろいろなカレーパンで紹介するコラムページ
同意やバウンダリーなど、自分だけでなく自分以外の人も大切にするための生活スキル「からだの権利」「からだの境界」をパンの袋を使って解説。
【著者プロフィール】
監修:浅井春夫
1951年生まれ。立教大学名誉教授、一般社団法人“ 人間と性”教育研究協議会代表幹事、日本民間教育研究団体連絡会世話人、子どもの権利条約NGO・市民の会共同代表。専門分野は児童福祉論、セクソロジー(人性学)。主な著書に『包括的性教育』(大月書店、2020年)、共訳『改訂版 国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(明石書店、2020年)などがある。
絵:ニシワキタダシ
イラストレーター。なんともいえないイラストやモチーフで、書籍や広告、グッズなど幅広く活動中。著書に『かんさい絵ことば辞典』(パイ インターナショナル)、『えでみる あいうえおさくぶん』(あかね書房)、『かきくけおかきちゃん』(大福書林)、『くらべる・たのしい にたことば絵辞典』(PHP研究所)などがある。
文:礒 みゆき
栃木県生まれ。造形作家を経て、絵本・童話・紙芝居作家となる。紙芝居「ねんね ねんね」で高橋五山賞審査員特別賞を受賞。作品に『ぼくがきらいなわけ』シリーズ、『ちいさなしろくまおうじ』シリーズ、『ボロ』(絵:長新太)、『もりでうまれたおんなのこ』(絵:宇野亞喜良)、『みてても、いい?』(絵:はたこうしろう)、『それで、いい!』(絵:はたこうしろう)など多数。など多数ある。