かつて「子供ができない原因は女性にある」と信じられていた時代がありましたが、今や不妊の原因は男性にもあるというのは世間に広く知られています。
皆さんも、男性の不妊検査(精液・精子検査)があるのはご存じでしょう。
WHO(世界保健機関)が調査した「不妊の原因」によると、不妊全体のおよそ50%は男性に原因があるとされています。
- 男性のみに原因 24%
- 女性のみに原因 41%
- 男女ともに原因 24%
- 原因不明 11%
つまり、妊娠したくでもできない不妊夫婦(男女)の内訳は、以下のようになります。
- 男性不妊症 48%
- 女性不妊症 65%
- 夫婦共に不妊症 24%
精液・精子検査で「正常」判定。にもかかわらず、男性が原因で妊娠しないことがある
一般的な男性の不妊検査(精液・精子検査)は、採取した精液から「精子の量」「精子の数・濃度」「精子の運動率」「精子の形状」を調べます。精液の量や精子の数だけでなく、奇形ではない正常な精子が活発に前進運動をしているかどうか、をチェックするのです。
検査の結果、精液・精子が「正常」だと判定された場合、不妊の原因は女性にあると考えがちです。しかし、そうとは限らないことがわかってきたそうです。
こうした、これまであまり知られていなかった男性の不妊について、NHKが特集記事を公開しました。
精子も老化する? NHKが特集「男35歳 “精子” の分かれ道」
精子は元気なので、卵子までたどり着き、受精することができます。しかし、そこから順調に進まないのです。
これは『精子力』が落ちているためだそうです。精子力とは、妊娠させるチカラのことです。
記事で取材を受けている獨協医科大学埼玉医療センターの岡田弘医師(男性不妊専門)によると、精子力は35歳を境に「低下するグループ」と「落ちないグループ」に分かれるそうです。
岡田医師が行なった調査によると、すでに子供がいる男性は「落ちないグループ」に属していて、望んでいるのに子供ができない男性は「低下するグループ」に属している傾向があるようです。精子力が落ちないグループは20代から40代後半にかけて高い精子力をキープし続けていますが、低下するグループは35歳から急激に精子力が低下しています。
妊娠させるチカラ「精子力」が低下する原因については、現在研究中でまだはっきりとはわかっていません。精子は毎日作られるので、いつも新鮮ではあるのですが、岡田医師は「精子をつくる細胞が老化しているのでは」と考えているそうです。
男性の不妊専門医は、全国にたった51人にしかいない。女性は600施設もある
男性の不妊は、治療できる場合もあります。
代表的なのは、精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)という疾患で、男性の陰嚢部分に瘤(こぶ)ができるのが特徴です。瘤ができると、陰嚢内の精巣の体温が上昇し、精子に悪影響を及ぼしてしまいます。
精巣は、本来冷やさないといけません。なぜなら精子は熱に弱いためです。手術で瘤を取り除くことで陰嚢の体温が正常値に下がり、男性不妊が改善へと向かうという訳です。
ちなみに男性の陰嚢は冷やすのが大切という観点から、「ボクサーパンツよりトランクスが良い」「陰嚢内に精子を長期間溜めないようにする」なども言われています。
*【参考】精索静脈瘤の画像は、gooヘルスケアに掲載されています。陰嚢部分に小さな瘤がいくつも連なっています。こんなのができていませんか?(精索静脈瘤とはどんな病気か)
またNHKの特集記事内では、「不妊検査・不妊治療は夫婦で行おう」と勧めているのですが、それについての問題も指摘しています。なぜなら、男性の不妊専門医が極端に少ないからです。男性向けの不妊専門医は、全国にたった51人しかいません。それに対し、女性向けの不妊治療施設は全国におよそ600もあるのです。
51人と、600施設。
雲泥の差ですね。
今回ご紹介した男性不妊については、以下のNHKニュースの記事を見てください。
■関連リンク
男35歳 “精子”の分かれ道 | NHKニュース
(【追記】記事公開終了しました)
不妊の定義は、性行為を断続的に行い1年たっても妊娠しない状態
余談ですが、不妊の定義についても知っておきましょう。
これは日本人にとっては重要です。なぜなら、日本人は「夫婦間の性行為の平均回数が世界最低」だと言われているからです。
日本産婦人科学会によると、不妊の定義は以下のように定められています。
生殖年齢の男女が妊娠を希望し,ある一定期間,避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず、妊娠の成立をみない場合を不妊という.その一定期間については1年というのが一般的である.
日本産婦人科学会
期間は「1年」とありますが、日本では性行の回数については定められていません。国際的には、週3回(2〜3日おきに1回)が標準的なイメージのようです。
不妊に悩む夫婦は、5〜10組に1組
近年、不妊が話題になる背景に晩婚化があります。
一般社団法人日本生殖医学会によると、女性の場合、以下のように解説されています。
- 【20歳前後】妊娠しやすい年齢
- 【30歳台後半】年ごとに妊娠し難くなる
- 【45歳〜】排卵や生理があっても、赤ちゃんを作ることの出来る強い卵子はできなくなってしまうため、妊娠の可能性はほとんどなくなる
男性も、女性も、若い方が妊娠しやすい、ということになります。
また、不妊症の割合は、5組から10組に1組と言われているそうです。
■関連リンク
不妊症の人はどのくらいいるのですか?:日本生殖医学会
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