神社やお寺で遊ぶ、子どもは多いと思います。
街に公園がつくられるもっと前の時代から、子ども達は神社やお寺で集い、遊んでいた。そんな場面が映画や小説、アニメやドラマなどで度々登場します。日本の子ども達にとって、神社やお寺は長らくの遊び場です。
わが家の息子は、神社のお賽銭と鈴が大好きで、2歳頃から通りがけに神社を発見したら「カランカランする!」と一目散に駆けていきます。今は4歳で保育園に通っていますが、保育中に近所の神社へお散歩するのも習慣です。
実はそんな神社で、先日、子どもの死亡事故が起きたのです。
石灯籠に登って転落、一部倒壊し下敷きになり死亡
2018年10月18日、群馬県高崎市上里見町の稲荷神社で、石灯籠に登って遊んでいた中学1年生が転落。外れた灯籠の一部が腹部に落下し、死亡しました。
事故を報じた朝日新聞によると、地元で開催されるお祭り「榛名ふるさと祭り」の稽古のため、子ども約20人と大人約15人が神社の隣の公民館に集まっており、稽古を終えて大人が片付けをしているあいだ、子ども達が鬼ごっこをしていたそうです。
そのうちのひとり、中学1年生の男子生徒(13歳)が高さ1.8メートルの石灯籠から転落し、外れた灯籠上部の宝珠など(重さ約53kg)の下敷きになりました。男子はまもなく、搬送先の病院で外傷性出血性ショックで死亡しました。
*参考:石灯籠から転落、下敷きに 男子中学生が死亡 群馬:朝日新聞デジタル
石灯籠は簡単に倒れます
上記2枚の写真は、僕の地元、大阪府岸和田市にある弥栄神社で撮影したものです。灯籠が傾き、立ち入り禁止のテープが張り巡らされ、何やら物々しいですよね。これは、2018年9月4日、近畿に上陸した強烈な台風21号が残した爪痕です。
木製・石製、両方の灯籠に、「倒壊の恐れあり。絶対に登ったり、もたれたりしないでください」と注意書きが貼られています。
灯篭、特に石灯籠はとても頑丈そうに見えますが、実は簡単に倒れるそうです。
石灯籠や墓石の耐久性
石屋のウェブサイトに、石灯篭の立て方が掲載されていました。ザッとまとめると以下の流れです。
- 土の地面に基礎の穴を掘る
- 砕石を敷いて、ランマー(エンジン式で地盤を固める道具)で地面を固める
- 地面に4本の杭を打ち込む
- 基礎の上に砂をセメントを混ぜたモルタルを敷く
- その上にパーツに分かれた灯篭を設置していく
- パーツは、はめ込み用の穴(ほぞ)に挿していきます。上に積み上げていくイメージです
石灯籠は、平らにした地面の上に、ブロックのように乗せて組んでいます。全体をガチガチに固めている訳ではないようです。
また、灯籠ではありませんが、他の石材屋が紹介している暮石の耐久年数について、かいつまんでお伝えします。墓石によく使われている御影石は極めて高い耐久性があり、半永久的です。しかし、石と石のつなぎ目は弱く、正しい施工をしなければ3〜4年で剥離し、7〜8年で傾きが生じはじめます。
石は強くても、基礎コンクリートや接着剤などの施工資材には寿命があるのです。
近年は耐震性を考えた施工が一般的になっているそうですが、それでも寿命はあります。しかも、昔のものとなれば、強度はかなり低いと考えられます。
この映像は、金沢大学で行われた地震発生時の石灯籠の耐震性の実験です。最新の地震対策がほどこされた石灯籠は阪神大震災級のM7.3の揺れでも倒れませんが、従来品はバラバラに崩れ落ちてしまいます。
伊勢神宮でも、石灯籠が倒れて死亡事故
こうした石灯篭に関する事故は、他でも起きています。
近年では、同年4月に三重県の伊勢神宮の周辺に設置されている石灯篭に、路線バスのサイドミラーが接触し、石灯篭の上部が落下。歩行中の男性をの頭を直撃し、死亡しました。
石灯篭の上部は、ボルトや鉄柱などでは固定されていなかったそうです。
*参考:伊勢神宮周辺の石灯籠、バス接触で落下 直撃の男性死亡:朝日新聞デジタル
神社は公園じゃない、灯籠や石碑は遊具じゃない
神社の石碑に登って遊ぶ子ども達のこの写真には、わが家の4歳の息子が写っています(絵画風に加工しています)。
ここは旅行先で訪れた神社です。ちょうど子どもの相撲大会が開催されていて、神社内ではたくさんの子ども達が遊んでいました。
これは、大きな石碑です。
子ども達は、ここに登って遊んでいました。息子も登りたがったので、僕は抱っこして乗せてあげたのです。
これだけ大きな石碑なので簡単には倒れないように思いますが、今、改めて考えると、安易だったかな……と思います。
神社内にある灯籠や石碑は、人が登るためにつくられていません。また、公園の遊具のように安全基準があったり、安全に遊べるためのメンテナンスが行われている訳でもありません。神社やお寺の灯籠や石碑は、「倒れる危険性がある」というのは知っておかないといけませんね。
昔であれば、「こら、登るな!」「バチが当たるぞ!」と、他人の子どもであっても厳しく叱る大人がいたと思いますが、今はそうした叱る大人が減少しています。もし、子ども達が石灯籠にのぼっているのを見かけたら、「これは倒れるから危ないんだよ」と教えていきたいです。
この度は、石灯籠で亡くなられた方へ、心よりご冥福をお祈り申し上げます。