町内会は必要?不要? 強烈な台風21号の被害の直後、なぜ岸和田だんじり祭は開催できたのか

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町内会の不要論。

任意団体でありながらも強制力を持つ町内会に、反発する声をよく耳にするようになりました。みなさんの地域ではどうですか?

僕は今、東京都世田谷区で暮らしていますが、近所の町会館に集まっているのは高齢者ばかりです。60代〜80代の方が、集めた空き缶を一生懸命つぶして廃品回収として出している姿をよく見かけます。「年配の方がボランティアで重労働をして大変だなぁ」とは思いますが、たいした金額にもならない空き缶集めを、大人が何人も集まってやることに疑問を感じてしまいます。

また、近隣でお神輿を担ぐ祭もあるのですが、人手不足で明らかに貧相な印象です。太鼓や笛の鳴り物のなり手もいないのか、録音した鳴り物の音声を町内会のスピーカーで放送しているのです。

僕は大阪から上京してきた、よそ者です。

とはいえ今は、この街で子育てをしながら暮らしているので、地域に貢献したい気持ちが無いわけではありません。しかし今のところ、町内会の活動は傍観しているだけで、「やってみたい!」という気持ちには至っていません。

世の町内会不要論は、わからなくもないのです。

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町内会の活動がすごい、大阪府岸和田市

だんじり(岸和田だんじり祭 春木地区 大道町)

さて、話は東京から大阪府岸和田市へ移ります。

大阪南部にある岸和田市は、僕の生まれ故郷で33歳まで暮らしていました。「だんじり祭」が有名で、僕も幼い頃から参加し続け、上京後は見物のために毎年帰省しています。今年も皆さんの勇姿をしっかりと見せてもらいました。

ただし今年の祭は、開催に向けて大変な困難に直面したのです。

強烈な台風21号、2018年9月4日に近畿上陸

岸和田市のとなり、泉北郡忠岡町のようす。電柱は何本も倒れ、家なども倒壊。

それは「岸和田だんじり祭」開催の、およそ10日前のことです。

2018年9月4日、強烈な台風21号が日本に上陸し、近畿地方を中心に大きな被害をもらたしました。ほとんどの住人がこれまでに経験したことがない、凄まじい風が吹き荒れたのです。

僕は、そんな台風上陸から10日後、被害を受けた大阪南部の岸和田市を訪れました。そこには、屋根瓦が飛んでブルーシートがかぶった家や、看板が壊れたお店や、木々がバッサバッサ倒れた神社や公園がありました。

台風上陸と同時に広範囲で「停電」が発生し、それが数日から1週間以上続き、生活も大変な不便を強いられたそうです。

弥栄神社、台風で木々と灯篭が倒壊

弥栄神社(岸和田市)灯篭ろ木々

岸和田だんじり祭、春木地区のだんじりが宮入(みやいり)をする弥栄神社(やえいじんじゃ)。NHKの連続テレビ小説「カーネーション」の舞台にもなった神社です。

両サイドの灯篭には黄色の立ち入り禁止テープが張り巡らされています。

 

弥栄神社(岸和田市)台風で壊れた灯篭

灯篭は壊れ、木が折れています。

 

弥栄神社(岸和田市) 台風で傾いた灯篭と石灯篭

木製の灯篭だけでなく、石灯篭も傾いています。

 

弥栄神社(岸和田市)台風で破壊された灯篭

完全に破壊された灯篭。

 

弥栄神社(岸和田市)台風で倒れた木々

木は何本も倒れました。

 

弥栄神社(岸和田市)台風で倒れた木の根

巨木でさえ、根元からバサリと抜けています。

 

弥栄神社(岸和田市)看板 台風の影響により危険 立入禁止

神社内のあちこちに、「台風の影響により危険 立入禁止」の注意書きが貼られ、ロープが張り巡らされています。

 

弥栄神社(岸和田市)注意が必要 灯篭は危険です。倒壊の恐れあり

灯篭にも「倒壊の恐れあり 絶対に登ったり、もたれたりしたいでください」と、注意書き。

春木八幡山遺跡(八幡山公園)、台風で木々が倒れ無残な姿に

八幡公園 根元から倒れた木

こちらは、弥栄神社の東隣にある公園。縄文時代晩期(約2,500年前)の縄文土器の小片が出土し、この頃からこの地域で人が暮らしていたことを示す重要な遺跡でもあります。

地元では、通称「八幡公園(はちまんこうえん)」として親しまれています。

ここでも木が何十本も倒れていました。

 

八幡公園 すべり台とがれき

すべり台とがれき。

 

八幡公園 根元から倒れた木

根元から倒れた木。

 

八幡公園 台風で倒れた木

こちらも根元から倒れています。

 

八幡公園 台風でぼろぼろになった公園

倒れた木がそのまま放置されているものもあれば、カットして小さくまとめられている木もあります。

 

八幡公園 台風のがれき

まるで空襲でも受けた後のような様相で、その中で子ども達が遊んでいます。「ここは日本なのか? 現代なのか?」と、妙な気持ちになりました。

手前にいる子どもは、わが家の息子の鼓太郎(4歳)です。

瓦が落ち、ブルーシートをかぶった家があちこちに

ブルーシートをかぶった屋根

これは、僕の実家です。

屋根の瓦が落ち、ブルーシートがかけられています。また屋根に設置していたテレビのアンテナが、離れたところに吹き飛ばされました。

こうした家が、あちらこちらにあるのです。見渡す限り、と言っていいほどに。

 

岸和田市立大芝保育園

こちらは、僕が子どものころ通っていた岸和田市立大芝幼稚園。屋根にブルーシートかけられいますね。

岸和田市の町内会が活躍し、地域をすばやく復興させた

弥栄神社(岸和田市) 鳥居とだんじり
2018年9月15・16日に開催された「岸和田だんじり祭」

凄まじい爪痕を残した台風21号ですが、台風上陸から11日後の9月15日・16日には、例年通り「岸和田だんじり祭」が開催されました。

被災地なのに、なぜ?

短期間で復旧させたその陰には「町内会」の活躍があったのです。僕は、岸和田で暮らす両親、友人、近所の方から、復旧作業について色々と話をうかがいました。

 

「青年団の人が来て自宅のがれきの撤去を行ってくれた。家には年配者しかいないので助かった」

「町内会の各種団体が、町の清掃を行った」

「各町の青年団などの団体が神社に集まり、倒れた木など、がれき撤去をみんなで行った」

「市からブルーシート配布のアナウンスがあったけど、すぐには配布しきれない。そこで町内会が配布を手分けした」

「隣組の若者が、屋根にのぼってブルーシートをかけてくれた」

 

これらは本来、その家の住人や役所が行うべきかもしれません。しかし、日頃より町内会や結束や連絡網が行き届いているので、災害時の復旧・復興に町内会が大いに活躍したのです

 

テレビなどのマスメディアでは、関西国際空港の滑走路が水没したり、本土と空港島を結ぶ連絡橋にタンカーが激突したりしたニュースが連日報道されていました。

さらに台風21号上陸から2日後の9月6日、北海道で巨大地震が発生したため、報道の中心は北海道へと移っていきました。

台風被害にあった町の様子は、あまり報道されませんでしたが、実際はかなりの被害があり、地元住人の尽力により復旧・復興している部分が大いにあったのです。

こうした経緯により、岸和田市では「だんじり祭」が今年も例年通り開催されたという訳です。すごい!

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町内会は、必要か? 不要か?

岸和田市民は、だんじり祭の影響もあり、代々地元で暮らす方が多い印象です。しかも「子ども会」の頃から参加してきた同じ町内会に入るため、結婚後も同じ町内で家を建てたり借りたりする人も多いのです。

こうした地元愛は、岸和田に限らず、地域の祭に参加したり代々地元で暮らして来たりした方は、ほぼ町内会に加入するでしょう。

しかし、都心に引っ越して一人暮らしを始めたり、地元ではない地域で家族を持ったりした方は、町内会に入るでしょうか? 一戸建てを購入し「終のすみか」と考えている方の加入率は高いと思いますが、賃貸で一時的に暮らすのであれば入らない方の方が多いと思います。

町内会の仕事と会費

実際、町内会に入ると忙しくなります。

僕が入っていた岸和田の町内会では、年間行事として以下のようなことがありました。ほんの一部をご紹介します。

  • 【元旦】だんじり小屋を開けて、子ども達にお菓子(お年玉)を振る舞う
  • 【6月】町内の薬剤散布(蚊の発生を抑えるため)
  • 【7月】夏祭り開催。子ども達に金魚すくい、綿菓子、フランクフルトなどを振る舞う
  • 【8〜9月】だんじり祭りの準備と、祭り開催
  • 【12月】夜警(火の用心)、餅つき
  • 【年中行事】町内清掃、葬儀のお手伝い

これらの活動に加え、町会費や青年団など各種団体の会費も支払います。

町会費は年間数千円ですが、青年団などの団費は年間数万円する町内会も多いです。会費以外にも日頃の交際費や、祭開催時の寄付もあるので、町内会に年間数十万円投じている方が大半です。さらに、会長や副会長、団長や副団長、だんじりの曳行責任者など役職に就くと、年間100万円以上の出費になることもザラです。

町内会のルーツは、戦時中の隣組

そもそも、町内会とは一体何なのか? 最後に町内会そのものについて触れておきます。

まず町内会ですが、世界的には非常に珍しい組織だそうです。

これについては「町内会 海外」などでウェブ検索をしてみてください。日本の町内会が、世界的にいかに特殊であるかがわかるでしょう。ただ、悪い見方をされている訳ではなく、災害などの緊急事態では行政よりも迅速に動けるとして評価されている一面もあります。

では、日本にはなぜ町内会ができたのか。

それは、第二次世界大戦時の国家総動員体制のもと、国の末端組織としてできた「隣組」がルーツと言われています。隣組は、国の制度として作られました。

その隣組制度を広めるため、1940年にはこんなテーマソングもラジオで放送されました。

とんとんとんからりんと隣組

作詞 岡本一平
作曲 飯田信夫
歌 徳山璉
レーベル ビクターレコード

とんとん とんからりと 隣組
格子(こうし)を開ければ 顔なじみ
廻して頂戴 回覧板
知らせられたり 知らせたり

とんとん とんからりと 隣組
あれこれ面倒 味噌醤油
御飯の炊き方 垣根越し
教えられたり 教えたり

とんとん とんからりと 隣組
地震やかみなり 火事どろぼう
互いに役立つ 用心棒
助けられたり 助けたり

とんとん とんからりと 隣組
何軒あろうと 一所帯
こころは一つの 屋根の月
纏(まと)められたり 纏めたり

 

あれ? この曲の感じ、なんか知っているぞ。

そう思った40歳以上の方、それは「ドリフ大爆笑」のテーマソングです。じつはこの曲、「とんとんとんからりんと隣組」の替え歌なのです。

ド ド ドリフの大爆笑
チャンネル回せば 顔なじみ
笑ってちょうだい 今日もまた
誰にも遠慮はいりません

懐かしいですね。笑

戦後、隣組はGHQにより解体されたのですが、その後復活しました。戦後の隣組・町内会は、政府とは関係のない任意団体として、地域それぞれの活動を行っています。

町内会の問題点 役所が頼りすぎ

僕は子どもの頃から、町の清掃、薬剤散布、廃品回収、夜警などを行って来ましたので、特に疑問を感じることなく、これらに参加していました。

しかし、東京に引っ越してから、「あれ? 今までやってたのって、本来は役所の仕事じゃないの?」と、30代にして気づいたのです。暮らしている方は「住民税」を払っているのに、なぜボランティアでここまでしないといけないのか!? と。

地域の子どものために夏祭りを開催するのは、町内会ですればいいでしょう。でも、道路を掃除したり、側溝や草むらに薬を撒いたりするのは、本来役所の仕事ではないでしょうか。「町内会の結束を良いことに、岸和田市役所はそれに甘えているのではないか」と思えて来たのです。

これは岸和田市に限らない問題だと思います。

町内会の問題点は、町内会にあるのではなく、本来役所がすべきことを町内会に暗黙の了解で負担させているところに問題があるのではないでしょうか。

町内会の良いところ 災害時の迅速な動き

とはいえ、岸和田市は町内会のおかげで、台風被害からいち早く復旧・復興ができました。特に年配の方にとっては、青年団の若者が手助けにきれくれたのは心強かったことでしょう。

また、日頃から町の清掃を行っているので、がれきの回収もスムーズです。さらに、完全な縦社会なので、町会長の号令一下で、町内会の各種団体が一斉に行動を起こせます。

なんだか良いのか悪いのかよくわからなくなってきた町内会ですが、災害時はすごく心強いのは確かです。

 

では、町内会は必要なのか? 不要なのか?

記事冒頭で「町内会不要論」について書きましたが、不要と言い切ることに対して僕は反対です。では、どうすれば町内会が盛り上がるのか?

それは、道路の掃除や空き缶回収など一部の役割を役所に返納し、町内会のメリットに注力して行けば、町内会の魅力や必要性が知られ、町内会が活気付いてくる、と僕は考えます。

これは、小中学校のPTAにも言えるのですが、話し出すとさらに長くなるので、今回はこの辺で。

岸和田の皆さん、だんじり祭おつかれさまでした!

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