小学生を対象に行った「将来なりたい職業ランキング」によると、最新の2015年度版では、女児の第3位が「保育士」でした(NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会 調べ)。
そんな子ども達の憧れ「保育園の先生」ですが、今、大変なことが起きています。
保育士不足は特に都市部が深刻で、東京の9月の有効求人倍率は5・44倍。新規開園の遅れや、定員分の園児を受け入れられない原因となっている。
一方、保育士資格があるのに保育所で働いていない「潜在保育士」は全国に70万人以上いるとされる。この潜在保育士が保育現場に戻るように、一定期間保育施設で働けば返済を免除する貸付制度を新設する。
保育士さん復職して! 厚労省が緊急対策、支援強化へ:朝日新聞デジタルより一部引用
「保育士さんが全然足りないよ〜!」と、政府が悲鳴をあげています。どれくらい足りないのかというと、他の職種も合わせた全体の平均「有効求人倍率1.2倍」程度に対して、保育士は「有効求人倍率5.44倍」という驚異的な人材不足です。
その前に、まずは有効求人倍率について、わかりやすくお伝えします。
有効求人倍率とは?「1倍の場合」
「働きたい人」と「求人数」が同じ。
有効求人倍率とは?「5倍の場合」
「働きたい人」が1人に対して、「求人数」が5人。
仕事を探している働き手としては、じっくりと就職先を選ぶことができます。ただし求人側は、ひどい人手不足で、優秀な人材を確保するのがとても困難です。
就活業界では、このような状況を「売り手市場(うりてしじょう)」といいます。
有効求人倍率とは?「0.5倍の場合」
「求人数」が1人に対して、「働きたい人」が2人。
求人側は、じっくりと良い人材を選ぶことができます。ただし仕事を探している働き手は、なかなか就職できなくて苦労することになります。
就活業界では、このような状況を「買い手市場(かいてしじょう)」といいます。
なぜ、足りないのか?「少子化だけど……」
ニュースでもたびたび報道されているように、日本は今「少子化問題」を抱えています。第2次ベビーブームのピーク、1973年には約210万人の赤ちゃんが生まれました。しかし昨年2014年は、かろうじて100万人をキープしている程度に激減しています。
「子どもの数が半減しているのであれば、保育士さんは余っているのではないか?」と、考えてしまいそうですが、近年の「女性の社会進出」「夫婦共働き化」「核家族化」「シングルマザーの増加」などにより、保育園を必要としている家庭が増えています。
要は、子どもの数は減っているのに、保育園が必要な子どもが急増している、ということです。
なぜ、足りないのか?「給料が安い」
これは、世田谷区の掲示板に貼られていた「世田谷区立保育園の非常勤講師募集のお知らせ」です。
なんというか、えらく給料が安くないですか?
- 実働6時間、
- 月20日出勤で、
- 152,300円。
ここから住民税、所得税、保険料などが天引きされるので、手取り額はいくらになるんでしょうか。実働6時間ということは、ほぼフルタイムに近いですよね。それで手取りが月に10万円ほどだなんて……。
上記の朝日新聞デジタルの記事でも、「保育士の賃金が、全産業の平均と比べて月10万円程度低い」と書かれていました。
僕は、実際に保育園を利用して、保育士さんの仕事の素晴らしさを知っています。うちの息子は、保育園のおかげでとてもスクスク育っています。しつけもしていただいています。親の悩み相談にものってくれます。とても尊い職業だと深く実感しています。
実際の仕事も、人の子どもを預かるので気苦労が多い、園内感染で先生も病気になりやすい、朝早く夜遅い場合も多い、数年単位で異動がある、など他の仕事に比べて、給料が安い理由が思い当たりません。
そんな保育士が他の職業に比べて給料が安いとなると、やはり、なり手は少ないんじゃないかと思います。
現役の保育士などが、安すぎる給与の改善などを訴えた。 手取り月収は、24歳、2年目で、およそ11万4,000円、28歳、6年目で、およそ14万円。これはフルタイムで働く保育士の給与明細。 ※保育士とか介護士とか…生活厳しいもんね… pic.twitter.com/fsybZnkOgp
— 無外流の狼 (@miburou3) 2015, 11月 3
日本は今、問題解決に取り組んでいるのか? 単に先送りしているだけなのか?
安倍首相は、今年2015年9月、今後の政策「新・三本の矢」のひとつとして『夢を紡ぐ子育て支援』を掲げました(残るふたつの矢は「強い経済」「安心につながる社会保障」)。
- 待機児童ゼロの実現
- 幼児教育の無償化を拡大
- 不妊治療の支援
- 結婚を望む若者の後押し
- 出生率を1.4から1.8まで回復させる
この政策をみると、育児中の家庭や、将来子どもが欲しい若者にとって、とても子育てがしやすい未来が待っているように思えますよね。でも実現させるには「財源」と「人材」が必要です。
そこで、安倍首相は「新・三本の矢」を実現させるために、「一億総活躍社会」というプランを掲げました。とにかく、国民みんなが働いて強い経済をつくり、それと並行しながら、社会保障、子育て支援も行う、いうことです。
だ、大丈夫なんでしょうか?
個人的には、崖っぷちを駆け抜ける作戦のような印象です。
なぜなら、子育てをしながら働くことの大変さを実感しているからです。保活もめちゃくちゃ大変ですし、病気になったら頼れる病児保育などもとても少ない。わが家では幸い経験していませんが、妊娠・出産時に受けるマタハラも社会問題になっています。また、親の介護をしながら、育児をしている方もいるでしょう。
そういう意味でも、育児世代の総活躍としては、その根幹としての保育園充実は最優先かと思います。認可保育園だけに注力するのではなく、認可外保育園への支援も強化してはどうでしょうか。
今、安倍政権が行っている政策は、根本的な解決につながるのか、それとも単なる問題先送りなのか? そのあたりは、ニュースなどを見て見極めてゆきたいですね。
日本国民から徴収した税金を預かり、その予算で舵取りを行う政治家の皆さん。大変むずかしい問題かと思いますが、どうぞよろしくお願いします。期待しています!
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