小中学校のプール、水出しっぱなしはミスした先生に損害賠償請求すべき? それとも……

全国の小中学校で行われている「水泳」の授業。多くの学校で校内にプールを備え、教職員らによって注水・清掃・消毒用の薬品投入など、日々の管理が行われています。

そんな中、毎年恒例のように水道出しっぱなしによる損失被害が起きています。原因のほどんどが、給水ポンプの締め忘れ、認識の相違、伝達不十分などのミスです。

そして、その人が起こしたミスに対して損害倍書を求める流れが近年定着しています。

つまり、担当した先生やその上司である校長・教頭らが責任を問われ、損失の一部、もしくは全額を個人負担で支払っているのです。

先生個人に弁償させることに対して、世間では賛否両論が巻き起こっています。「業務上のミスに対して個人負担させるのはおかしい」「先生が萎縮してしまう」「プール管理は外注すべき」など。

皆さんはどう思いますか?

小学校で起きたプールの水出しっぱなしによる損害賠償請求事例

溢れる水

まずは、プールへ水出しっぱなしで水道料金が跳ね上がり、教師らに損害倍書請求を行った事例をご紹介します。

目安として、25mプールを満タンにするには「水の量は約360トン必要で、水道料金は約30万円になる」とニュース記事から計算できます。また、給水時間は11〜12時間ほどかかるようです。

2023年「川崎市立稲田小学校」担当教諭と校長に請求

6日間、水を出しっぱなしのミスが発生しました。損害の5割を先生に請求。

川崎市教育委員会は10日、市立稲田小学校(多摩区)でプール開きに備えた作業の際、6日間にわたり水を流し続けるミスがあったと発表した。流出した水はプール約6杯分の約2200トンに及び、損害額は約190万円。市教委は、作業を担当した30歳代の男性教諭と上司の男性校長に過失があったとして、損害の5割にあたる約95万円を2人に請求した

 

市立小プールの水、6日間流し続けて損害190万円…市教委は校長と担当教諭に半額請求:読売新聞オンライン より

 

教諭や校長に負担させることに対して、川崎市へ抗議のメールや手紙が寄せられたそうです。それを受け、福田市長が自己責任であるとの説明をしました。

川崎市・福田市長「かわいそうだ、気の毒だという風潮になっていると思いますが、負担を全部公費で、税金で負担しますと言った時にみなさんどういう風に思われるでしょうか、と。なかなか自分で払うには厳しいなと思いますが、だからと言ってまけますという話はありえない。そこはしっかりやっていかなくちゃいけない

 

6日間プール放流で教諭らが賠償負担 川崎市長「妥当な処分」:テレビ神奈川 より

 

2022年「横須賀市立馬堀中学校」校長・教頭・担当教員に請求

こちらは特殊な事例です。ミスではなく、水を出しっぱしにすることでコロナ対策ができると思い込み、故意にオーバーフローさせ続けました。期間は2ヶ月以上で、およそ350万円の損失です。

市立馬堀中学校において、プール管理の担当教員が令和3年6月下旬から同年9月上旬までの期間、コロナ禍での「水質の維持管理」を理由として、管理職等と相談することなくプールへ給水を続け、大量の水道水をオーバーフローさせて流失し、水道料金及び下水道使用料として3,488,000円の損失が発生しました。

 

横須賀市は、この給水は、「水質の維持管理」として非常に不適切であり、過失があると判断し、関係教職員3人に対し損害賠償請求を行いました。

 

市立学校水泳プールにおける水道水の溢水事故について(2022年4月21日):横須賀市 より

 

2021年「高知市立初月小学校」校長・教頭・担当教員に請求

ミスにより、1週間水を出しっぱなしになった事例。半額を3人の教諭で負担しました。

高知市の初月小学校で今夏、教員がプールの給水を止め忘れ、1週間にわたって水を出しっ放しにしたことについて、市は21日までに「市民の財産に大きな損害を与えた」として校長、教頭、担当教員の3人に計約132万円の支払いを求めることを決めた。

 

市によると、初月小で7月、担当教員がプールの給水ポンプを稼働。止め忘れたまま、別の教員が気付くまで7日間放置された。同月の下水道料は290万円。

 

学校のプール給水止め忘れ132万円求償へ 高知市が教員ら3人に:高知新聞Plus より

 

報じられた再発防止策は、根本的な解決ではなく、アナログで人力に頼るものでした。

再発防止策として、担当者任せにせず職員室に「プール給水中」と表示するなど、複数の目でチェックできるよう各学校に求めた。

 

市立小でプールへの給水止め忘れ、校長ら3人に132万円請求へ…料金の半額相当:読売新聞オンライン より

 

2019年「綾瀬市立綾西小学校」教育委員会と学校関係者に請求

プールの給水栓の締め忘れ。「相手が閉めるとの思い込み」や「確認の怠り」が原因とのこと。

綾瀬市立綾西小学校(神奈川県)でプールの給水栓を閉め忘れ、約4千立方メートルの水道水が流出した問題で、同市は18日、人見和人教育長ら教育委員会事務局と学校関係の計7人に対し、上下水道料金の損失額の50%(約54万円)を損害賠償として請求し、厳重注意などの処分にしたと発表した。

 

(中略)

 

マニュアルの不在や組織管理の不備を考慮し、半額を請求。分担は7人で相談する。

 

学校プールの栓閉め忘れ、水道代の半分を7人に賠償請求:朝日新聞デジタル より

 

水道代を先生に弁償させる3つのリスク

損害賠償金

近視眼的に見れば「ミスをした本人に弁償してもらおう」ということになるのかもしれませんが、その判断には大きなリスクが潜んでいます。

先生に損害賠償請求する3つのリスクをお伝えします。

(1)損害賠償請求を受けたという精神的負担

もし、あなたが誰かから損害賠償請求を受けたら、どんな気持ちになりますか?

損害賠償請求は、単なるお代金の支払いとは違います。

損害賠償請求には、被害者と加害者がいます。被害者が被った損害を、加害者に対して埋め合わせとして金銭を請求するのです。

小学校や中学校の先生は、勤務時間が長かったり、部活の顧問を持っていたり、保護者対応があったりなど、労働環境の悪さがたびたび問題になっています。そんな中でも学校の先生を続けているというのは、児童・生徒たちに対しての想いがあるからだと思います。

子どもたちひとりひとりに向き合い、お金のためを度外視して日々励んでいる中で、加害者として損害賠償されるのです。自分が勤めている学校や、雇用されている自治体から。

真面目にやってきた先生が加害者だと認定される。悪いことをしたと烙印を押される。

これは精神的に辛いと思います。

 

(2)労働意欲を下げる・モチベーション低下

先生への損害賠償請求は、当事者はもちろん周囲の先生方も「ミスをしたら弁償されるんだ……」と、ネガティブな気持ちになるかと思います。

労働者にとって、お金とは労働の対価です。

ミスをしたことにより、数週間・数ヶ月の給与に相当するお金を請求されるというのは、タダ働きさせられているようなもの。まるで奴隷じゃないですか。

雇用主がそうした罰を与える環境において、「今日も頑張ろう!」という気持ちになるでしょうか? 「言われたことだけやろう」「余計なことはしないでおこう」「給料分以上のことはしたくない」……など、モチベーションが下がってしまうと思います。

夜の繁華街で働くような仕事であればハイリスク・ハイリターンで挑めるかもしれませんが、給料が決まっている公務員ですからね。

 

(3)教員不足が加速! 学生のあいだでブラックの認識が高まる

少子化問題が長らく取り沙汰されている一方、教員不足(教師不足)も問題になっています。

「子どもの数が減っているのだから、先生は余るのでは?」

そう思いがちですが、実は教員が足りていないのです。その原因は「産休・育休を取得する先生が増えた」「病気で休む先生が増えた」などいろいろと言われていますが、そもそも教員を目指す学生が減っているいう現状があります。

昨今の報道などを受け、学生の間で『教師はブラック』の認識が高まっているのです。

仕事中のミスで損害賠償させられる

サービス残業が多い・休日が少ない・モンスターペアレントの対応が辛いなどブラック化する要因は様々ですが、ミスで損害賠償はかなり過酷なものでしょう。

一般企業でもほぼあり得ません。「キャバクラ、ホストクラブ、風俗などで働いている人が遅刻・欠勤すると、給料から罰金として引かれる」というのは聞いたことはありますが、一般企業でそんな職場がありますか? 教師はヤバい……と思われるのは必然でしょう。

再発防止のための問題解決方法

解決

毎年、夏が来るごとにやってくるプールの水問題。どうすれば再発防止ができ、かつ教員不足の要因になるのを防ぐことができるのでしょうか。

先述した高知市立初月小学校の事例に、「再発防止策として、担当者任せにせず職員室に『プール給水中』と表示するなど、複数の目でチェックできるよう各学校に求めた」とありました。

これは根本的な解決になりません。予算・人員の関係でこれが精一杯だったのかもしれませんが、これで再発防止とは無責任だと感じます。

素人考えですが、こういった方法があるのではないでしょうか。

 

テクノロジーで解決

家庭では数十年前から「お風呂が沸きました」と教えてくれるじゃないですか。給水(給湯)が自動で止まってアナウンス。

もっと昔からあるものでいうと、水洗トイレの水って勝手に止まりますよね。これに関しては、電気は一切不要。中にボールが浮かんでいて、レバーをキュッとあがって水位を一定に保ってくれます。

なぜ、プールにこういった仕組みが無いのでしょうか?

おそらく、何十年も前に作られたプールで、初めから手動で、ずっとそのまま使っているからでしょう。ちょっとした装置を導入することで、自動停止や満水のお知らせをしてくれるのでは無いでしょうか。

「みんなでしっかりチェックしよう!」ではなく、テクノロジーで解決できると思います。容易に。

管理の外注化・郊外プール施設利用で解決

プールは施設管理のひとつです。これを教員に負担させるというのが、そもそも無理強いでは無いでしょうか。そこで、プールの管理を外注化して専門家に任せれば良いと思います。

また、最近はこんなニュースもありました。

日本経済新聞 東京都多摩市、小学校全校の水泳校外施設で 22年度から

東京都多摩市は7日、市内の小学校全17校の水泳授業を校外の屋内プールで行うと発表した。児童の熱中症を防ぐとともに、他の授業との調整など教員の負担を減らす狙いがある。水泳の授業を全校校外で行うのは全国でも珍しいという。2022年度予算案に指導の委託料などの費用5800万円を計上した。

 

市立温水プールのアクアブルー多摩や市内民間施設2カ所で水泳授業を行う。

 

東京都多摩市、小学校全校の水泳校外施設で 22年度から:日本経済新聞 より

これは面白いですね!

そもそも学校内にプールを作るのではなく、フル外注。すでにある民間のスイミングスクールに委託して、施設も指導も丸っとおかませ。

  • 先生の負担が減る
  • 児童・生徒はプロに教えてもらえる
  • 屋内なので天候で中止にならない
  • 民間のスクールは宣伝にもある

……など、メリット多数。全員が嬉しい、まさに「三方よし」じゃないですか。

こうした外の力を借りることで、問題を解決することができるでしょう。

【まとめ】先生個人の責任にするのは悪循環! 今すぐ断ち切ろう

学校の教室

ここまで、事例・リスク・解決方法をお伝えしてきましたが、みなさんはどう思いますか?

「厳重注意」
「しっかりチェック」
「ミスは自己責任」

これではいつまで経っても解決しません。

解決しないどころか「教員=ブラック化」が進み、悪い方向へと向かっていくでしょう。先生としての仕事、子どもたちの将来、日本の未来。それらを守るためにも、こういう悪いスパイラルは早めに断ち切ることです。

根本的な施策で、より良くなる方法はあるはずです。変えていきましょうよ!

今回の記事は、僕自身、小学生のいち保護者として、意見をブログに書かせていただきました。

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