子どもが、他人にいじわるをしたり叩いたりしたとき、どう注意すれば良いのでしょうか。
「自分がされたらどう思う? 嫌だよね。悲しいよね。痛いよね」
こういった具合に、子どもを叱ったりしつけようとしたりすることがあるかと思います。
しかし、子どもが未就学児や小学校低学年である場合、大人が思うようにこの言葉が響きません。一体、どんな声かけをすれば、他人の気持ちを理解してもらえるのでしょうか?
友達と関わるのは3歳から、コミュニケーション能力は10歳以降に育まれる
子どもの脳と身体は、赤ちゃんとして生まれてから、同じペースで右肩上がりで成長して行くわけではありません。
たとえば、5歳頃になると脳の『運動野』が活発に成長し、走ったり、跳ねたり、基本的な運動ができるようになってきます。また、10歳を過ぎた頃から思春期を迎え、男性・女性の体つきになってきます。
人間の脳は、お母さんのお腹の中にいるときから成長を続け、20歳頃にようやく完成すると言われています。
「他人の気持ちを理解しなさい」
これが獲得できるのは、いつ何歳頃からなのでしょうか。
保育士おとーちゃんとして知られる男性保育士の須賀義一さんは、自身の著書の中でこうおっしゃっています。
「友達と遊べるようにしなければ」と我が子に望む人は多いのですが、積極的に友達と関わりのある遊びを楽しめるようになるのは、三歳くらいからです。
この三歳という年齢にしても、「三歳からできるようになる」とか「三歳だからできなければ」という線引きではなく、あくまでそこから徐々に経験しながら身につけていけばいいというスタートラインです。
須賀義一・著『保育士おとーちゃんの「心がラクになる子育て」』 (PHP文庫)より引用
また、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍する、医師で医学博士の瀧靖之さんは、10歳以降に社会性を獲得するとおっしゃいます。
幼稚園や学校といった集団生活の中で、子供たちは少しずつ社会性を獲得していきますが、大人と同じくらいまで成長するのは10歳以降の思春期の頃です。この時期に、脳の中でもコミュニケーションを司る部分か発達するのです。
特に、小学校高学年から中学生の時期にかけては、いろいろな人とコミュニケーションをとる機会をつくってあげるといいでしょう。
他の能力と同様に、コミュニケーション能力も、14歳を過ぎてから獲得しようとすると、実は大変な努力が必要です。精神的にもストレスがかかります。
瀧靖之・著『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える 「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)より引用
子どもに聞く「自分がされたらどう思う?」は効果なし!? もっと響く言葉
てぃ先生として知られる男性保育士の倉津貴大さんが、ご自身のYouTubeチャンネルにて「子どもへの声掛け」について素晴らしい解説をされていました。
「自分がされたらどう思う?」
「相手はどう思うかな?」
小さなお子さん達にとって、この質問はとても難しい。
相手の気持ちを自分に投影したり、相手の気持ちを察する能力。これって脳の機能でいうと、めちゃくちゃ高度なもの! そうした能力が育ってくるのは、早くて小学3年生・4年生頃で、扱えるようになるのは小学校高学年や中学生になってからだと言われています。
中には、「自分がされたらどう思う?」と言われて「嫌だと思う」と答えることができる未就学児もいます。それは、ママやパパ、周りの大人達が「周りの人は嫌だと思うに決まってるでしょ!」と叱るからであって、高度な能力を身につけているわけではないのです。
そこで!!!
てぃ先生は、こうおっしゃいます。
「自分が大切な人が、それをされたらどう思うか?」
これだとすごく響きやすいと言います。だから……
「ママが誰かに叩かれちゃったら、どう思う?」
そうすると、子どもは「大事なママが叩かれるなんて嫌だ!」と、子どもが思えるそうです。
これはママの気持ちを察している訳ではありません。まだ、その能力は備わっていないので。「わたしの大切なママが叩かれるのは嫌だ」と、その子自身が自分事として嫌なのです。
これは、大人も同じですよね。自分のお父さんやお母さん、妻や夫、わが子のことなど、自分が大切だと思う人が誰かに傷つけられたら『自分も嫌』ですよね。
まだ相手の気持ちを察する能力が無い・低い幼いお子さんにとっても、「ぼくが大切なママやパパが、誰かに叩かれたら嫌だ!」とは思えるのです。この感情は「自分がされたらどう思う?」の嫌にもっとも近い感情とのことです。
その子が大切なママ、パパ、兄弟などにたとえてみる。
てぃ先生のアドバイス、ぜひ動画でご覧ください。