2歳の息子とリンゴと家族

朝、目ざめると妙に身体がだるかった。

「なんだこれは、うごかない」

いや、正確には動くんだけど、まったく動きたくない。

せっかくの日曜の朝なのに、ベッドに伏せたまた起き上がれない。初冬にしては珍しい晴天の休日。2歳半の息子は、まだとなりの布団で寝ていた。

「ごめん、なんかしんどくて……」

僕は嫁さんに伝えて、ベッドの中から出れずにいた。

しばらくすると、猛烈にお腹が痛くなりトイレへ向かった。下痢だった。

その日は、何度も何度もトイレとベッドの往復で、下痢と気だるさが抜けることはなかった。

普段より少し遅くまで寝た息子は、「うーん」と伸びをしながら気持ち良さそうに起きてきた。だけど、さすがに息子と遊んでやる元気が無くて、嫁さんに息子の朝食をまかせた。

「大丈夫?」
「うん。なんか急だし、食中毒かも」
「無理せずにゆっくりしててね。お粥食べる?」
「ごめん、まったく食欲が無いわ」

もし僕が、ウイルス性の急性胃腸炎かなにかだと一緒にいるのもマズい気もしたので、嫁さんにお願いして息子と外で遊んでもらうことにした。

 

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嫁さんから送られてくる写真には元気をもらえる。世田谷公園の機関車で遊んでいるらしい。息子のお気に入りの場所だ。

だけど僕は家でひとり、何度もトイレとベッドを往復。「はぁ〜だめだ」と思いつつも、少しだけ気力が出てきたので、体温を測ってみると38.2度だった。

《倦怠感 下痢 発熱 食欲不振》

Googleで検索すると、なんとも信ぴょう性が定かではないサイトばかりが出てくる。やたらと重い病気やガンだとか。

「インターネットって使えねぇなぁ〜。弱っているときこそさっさと的確な回答が欲しいのに、なんだよこれは……」と思いつつ、iPhoneを置いて僕はふたたび寝た。

 

ウイダーインゼリー エネルギー

夕方、息子たちが帰ってきた。

「パパーっ! お土産〜! ぜんぶ食べたらダメだよ」

と大きな声を上げながら、コンビニの袋から「ウイダーinゼリー」のエネルギーを取り出して、パパにくれた。ぜんぶ食べたら……のフレーズは、嫁さんがいつも息子に言っている口ぐせだ。息子はそれを真似て、今度は僕に使っているようだ。

ウイダーinゼリーは息子の大好物。それをくれるなんて。

弱っていた僕は、2歳半の息子に対して「なんという頼もしい息子なんだ!」と感じた。ちょっとおおげさかもしれないけど、僕は本当に息子がとてもしっかりしているように思えたのだ。生まれて初めて、そう思った。

そういえば僕は、食欲がなくて朝から水も飲んでいなかった。息子からもらったウイダーinゼリー、それに加えて嫁さんがリンゴをむいてくれて、僕はそれを食べた。その日の食事はそれだけだけど、それで十分なほど食欲がなかった。

 

翌日、僕はさいわい体調が良くなった。

病院へは行かずじまいだったので、何が原因だったのかはわからない。だけど僕は、ひとつだけわかったことがある。

「ひとりで子育てしている人って、病気ができないじゃないか」、と。

シングルマザー、シングルファーザー、夫が単身赴任、出張が多い夫や妻など、ひとりで子供を育てている家庭はどうしているのだろうか? 「ゆっくり養生できるのは何てありがたいことなんだ」と、僕は当たり前のことに気づいた。

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