日本では、少子化に対する不安が、ずいぶん前から高まっています。
「年間出生者数が、45年前の半分以下になった」
「1年間に生まれる赤ちゃんは、ついに100万人を切った」
「人口減少に歯止めがかからない」
反面、保育園が足りないという悲痛な叫びが止まりません。
「保育園落ちた、日本死ね」
保活で苦しむ母親が書いた、そんな匿名ブログ記事も話題になりました。
少子化で出生数が減っているのに、なぜ保育園が足りないの?
ここで、単純な疑問が湧き出てきます。
子どもの数が激減しているのに、なぜ保育園が足りないのか?
その答えは、夫婦の働き方にありました。
働きながら出産する女性が、5年前と比べ1.37倍に大幅増
厚生労働省が、2017年3月はじめ「人口動態職業・産業別統計」の最新版を公開しました(*1)。この統計で、働きながら子どもを出産する女性の割合が急増していることが明らかになったのです。
- 【2012年】有職の母 31.0%
- 【2017年】有職の母 42.4% 11.4%UP!
11.4%増加ということは、有職の母がおよそ11万人増えたことになります(年間出生数はおよそ100万人ですので、少子化を加味してざっくり試算)。働きながら子どもを育てるのは困難ですので、保育園などの育児施設が必要にな家庭が増え、保育園不足が起きていたのです。
今後、ますます出生数は下がると言われていますが、働く母親が増え続ければ保育園不足はなかなか解消されないということになります。
ちなみに、働いている父親はおよそ95%で、この割合はあまり変化がありません。
*1.【人口動態職業・産業別統計】この調査は、出生・死亡・死産・婚姻及び離婚の人口動態事象と職業及び産業との関連を明らかにし、今後の行政施策などの資料にするために、5年に一度行われています。
かつて日本は、専業主婦の方が多かった
これは子どもが、いる・いないに関わらずの統計ですが、かつて日本は専業主婦の割合の方が多い時代がありました。サザエさんや、のび太のママのようなお母さんですね。
しかし今は、共働き夫婦が大半です。
1980年頃は、およそ3分の2が専業主婦家庭でした。
その後、1986年に男女雇用機会均等法が施行されたり、バブル期に《ダブルインカム・ノーキッズ》を掲げ、子なし生活を謳歌する夫婦のスタイルDINKs(ディンクス)が流行したりで、働く女性が増えて行きました。
その結果、2010年代に入り、3分の2が夫婦共働き世帯に逆転したのです。
女性の社会進出はアメリカ化? 仕事を辞めるなら、離婚する
日本の働く女性は、自己実現のために働いている方と、家計を支えるために働いている方がいると思います。
また近年は、「専業主婦になりたい」との声も増えていると言われています。
ところでアメリカでは、専業主婦率がおよそ14%と、かなり低い割合となっています。また、専業主婦になりたいと羨む声は、ほとんどないそうです。
以前、日経ビジネスに掲載されていた記事によると、もし夫から「仕事を辞めて子どもの面倒をみてほしい」と言われた場合、女性の4分の3は「仕事を辞めるくらいなら、離婚して一人で子どもを育てる方を選ぶ」と答えたそうです。
日本は何かとアメリカの後追いをする傾向がありますので、女性の働き方に関しても、こうした流れになるかも知れませんね。子育て中の女性の方は、どう思われますか?
日本の現状。二人目、三人目の子どもとなると、状況は変わる
ここまでの説明だと、「これからは夫婦共働きで、出産・育児をする時代だ!」と思えますよね。でも、現実はちょっと違うようです。
厚生労働省の「人口動態職業・産業別統計」には、続きがあります。
一人目の子どもを出産するときは有職であっても、二人目、三人目の出産時は無職である割合が増えているのです。
- 【第一子】有職の母 42.4%
- 【第二子】有職の母 39.7%
- 【第三子】有職の母 38.4%
これは、なぜか?
当然、子どもが二人以上だと子育てにかかりきりになるため退職したであるとか、そもそも無職でないと二人目を望めないといった、家庭事情・社会事情があるでしょう。
でも、ここからは、一人っ子の3歳男児を育てるわが家で、僕が肌で感じたことを書きます。
一人目が生まれるときは社会人、二人目の妊娠がわかったときは親
わが家の息子は、ただいま3歳10か月です。
保育園へは0歳の頃から通っています。息子のクラスは、たまたま第一子目の子が多く、初めての子育てが始まってまもない新米ママ・パパが大半でした。みんな似た状況ですので、悩みごとも共通していていましたね。
しかし2〜3年後、状況はガラッと変わりました。
ほとんどの家庭で、第二子目が授かったのです。現在は兄弟育児が話題の中心です。わが家は一人っ子ですので、兄弟や乳児の悩みについては、さすがに話には入れません。
でも、その現実は僕たちにも影響を与えました。
なぜなら、二人目の妊娠・出産をきっかけに、幼稚園への転園を決めたお友だちが何人も現れたのです。僕は「もうすぐみんなで進級だね〜」とのんびり構えていたのですが、二人目を授かったご家庭では、ライフスタイルや子どもへの関わり方を見直したようです。
もちろん「二人を育てながら働くのは大変」という現実もあると思いますが、それ以前に、「もっと子育てに関わりたい。時間を掛けたい」と考えるママ・パパが増えたと感じるのです。
有職の母が第一子を出産するときは、「私は社会人」という想いが強いかと思います。
その後、子育てを通じて「自分は子を育てる親だ」の想いが芽生え、第二子目が授かったときには「社会で働くことよりも、子育てを優先したい」という気持ちが大きくなっているような印象を受けたのです。
保育園は、朝から夕方・夜まで預かってくれるので、親はフルタイムで働くことができます。
でも幼稚園は、昼過ぎに終わります。お弁当も必要です。夏休みも、冬休み、春休みもあります。親が参加型の行事も多数あります。この状況では、ママやパパのいずれかひとりはパートタイムやちょっとした自営業程度しかできないでしょう。もちろん収入も減ります。
それでも、子どもへの関わりを優先したいと考えるご家庭が、ちらほら出て来ているのです。
貴重な子どもとの時間を大切にするためだったり、私立小学校や大学付属小学校への進学を見据えた選択だったり、その先の想いは人それぞれかと思いますが。
わが家は経済的にゆとりがないので、専業主婦、もしくは専業主夫という選択は今はできませんが、みんなで進級するもんだとのんびり構えていた僕は、「なるほど、こうやって進む道が変わっていくのか」と、直面した初めての分岐点に驚きと別れの寂しさを感じました。
「人口動態職業・産業別統計」の数字には現れていませんが、第二子、第三子と増えるにつれて有職の母が減る背景には、親になってからの心理的変化もあるのではないかと、僕が感じていることを最後に書き添えました。
「夫婦の形は人それぞれ」とよく言いますが、「育児・教育」に関しては、もっと人それぞれなんでしょうね。
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