黙食とは、黙って食事をとるという意味で使われています。
わが家の小学1年生の息子(6歳)が、4月2日、学童2日目で覚えてきた言葉です。食事中、この言葉を学童指導員さんに教えてもらったとのこと。
聞き慣れない言葉にとまどいましたが、お弁当のときの言葉だと聞いて、黙食だと気づきました。
息子は、そう教えてくれました。
2020年2月頃から新型コロナウイルスが蔓延し、1年以上が過ぎました。小学校や学童では、感染防止対策の一環として「黙食」が行われているようです。
黙食は、辞書に載っていないことば
2020年11月20日、コロナ禍に刷新された国語辞典「新明解国語辞典 第八版」で調べてみると、黙食という単語は掲載されていませんでした。
一般的な国語辞典に載っていないということは、小学生向けの国語辞典にはきっと掲載されていない言葉なのでしょう。そんな難しい言葉を、入学式を前にして6歳の息子は覚えてきたのです。
黙食は、コロナが流行る前から使われていた
黙食は、新型コロナウイルスがきっかけで使われ始めた言葉でしょうか?
会食時に飛沫が飛びやすいため、食事中の感染拡大が懸念されています。そんな背景もあり、黙食の使用が広まったのは2020年のコロナ禍以降です。
でも、実は小学校では、コロナ禍以前より「黙食」が使われているのです。
以下、2018年12月にAERA.comで公開された記事です。
授業参観のため学校を訪れた女性(45)は、当時1年生だった娘の教室の後ろ扉をそーっと開けた。すると、目にとびこんできたのは、全員が前を向いて黙々と給食を食べる姿。
私語は一切なし。楽しいはずの食事の時間がなにかの訓練の場のように見えた。
『黙食』と呼ばれる指導なんです。子どもたちがしゃべりながら食べると時間がかかるかららしいです。
言い方は学校によりけりで、給食中は私語禁止の「もぐもぐタイム」「ぱくぱくタイム」などと表現している小学校もあります。
黙食もルーツは仏教? 読み方は「もくじき」
黙食という言葉は、古来、仏教のなかで使われてきた言葉だそうです。
読み方は、もくじき。
これは黙って食べる作法ではなく、以下のような考えに基づいているとのこと。
大阪・天王寺にある、学校法人蓮光学園「パドマ幼稚園」のサイトより、かいつまんで引用します。
仏教における黙食の考え方
仏教では、「いただきます」の心は、他者のいのちをいただきながら、生き続ける「おかげ」への感謝を表しており、それには「懺悔」「報恩」「共生」3つの思いがあります。
懺悔(さんげ)
食べものへの感謝
他者のいのちによって生かされるおかげ
報恩(ほうおん)
つくってくださる方々への感謝
他者のいのちによって励まされるおかげ
共生(ともいき)
ともに分かちあう仲間への感謝
他者のいのちとともに生きるおかげ
3つのおかげに感謝を致し、みんなが黙って(よく噛んで)いただく時間をたいせつにしています。私語禁止という意味ではなく、あくまで思念の時間であり、長さは時期や学齢によって異なりますが、数分間です。その後は、たのしくおしゃべりしながらいただきます。
また、大蓮寺のサイトには、以下のようにもありました。
いまそういった作法や真心を引き継ぐ家庭も、学校もほぼ皆無となりました。家族の食は消費的なものへ、学校給食はひたすら栄養本位に傾斜していく。いえ、何でも昔に戻れといいたいのではありませんが、どんなに便利になっても、どんなにゆたかになっても、日本人がなぜ食を「いただいて」きたのか、その真意を忘れてはならないと思います。
黙食、言葉の意味が変わってきている
つまり、そもそも黙食とは、黙って食べることではなかったのです。
感謝の気持ちをもって食事に向かう心がけであり、それが2010年代に入り給食をスムーズに食べさせる言葉として一部の学校で使われはじめ、2020年、コロナ禍で飛沫防止・感染防止を目的として「黙って食べる」言葉として認知されるようになったと考えられます。
学童2日目の息子から言われた
「パパ、黙食って知ってる?」
という言葉から、色々考えさせられるきっかけになりました。
ありがとう!