仕事と家族、両方をバランスよく充実させるのがアメリカ的。対して日本は、滅私奉公型で会社に尽すのがスタンダード。
しかし近年は、「女性の社会進出」「ライフワークバランス」「イクメン」といったキーワードとともに、日本人がアメリカ人的な生活スタイルに変化してきていますね。
でも、アメリカでは昔からそうだったわけではないのです。少なくとも35年ほど前(1980年頃)までは、アメリカも日本と同じく「家庭をかえりみない父親と、夫に尽くし家事と育児で神経をすり減らす妻」という構図があったようです。
1979年公開のアメリカ映画「クレイマー、クレイマー」
今回ご紹介するのは、1979年(昭和56年)のアメリカ映画。ダスティン・ホフマンが父親役、メリル・ストリープが母親役を演じた家族のドラマです。アカデミー賞を5部門独占するなど、大変話題になった作品なので、見たことはなくてもタイトルくらいは知っている、という方は多いでしょう。
実は、僕もこの映画は未見で、先日読んだ本「父親はどこへ消えたか」の中で紹介されていて気になったので、TSUTAYAでDVDをレンタルしてきました。
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クレーマーやクライマーの映画ではありません
僕は勝手な想像でクライマー(山登り)の映画だと思っていました。笑
邦題は「クレイマー、クレイマー」と、ストーリーがピンと来ないタイトルですが、原題は「Kramer vs. Kramer」。テッド・クレイマー氏とジョアンナ・クレイマー夫人の対決。要は、夫婦間抗争 = 離婚裁判、ということです。
- 離婚についての戦い
- 親権を巡っての戦い
具体的には、この2点です。
妻は、5歳の一人息子を残して、家族のもとを去ってしまいます。夫は決して悪い夫ではありません。浮気も、ギャンブルも、借金も、DV(家庭内暴力)も、ありません。唯一の問題点は、「仕事に熱心なあまり、家庭を妻に任せっきりにしすぎた」という点です。
夫はこれが問題を引き起こすなんてこれっぽっちも思っていませんでしたが、妻は心に不満を少しづつ溜めてしまい、ついには「子供を残してでも、家を去るしかない」と決断します。
そこから、残された父親と息子の生活がはじまります。父親は仕事はできても、家事や育児はからっきし。息子は「ママはいつ帰ってくるの?」と、居なくなったママを求めます。夫は困惑しながらも、子育てに取り組みます。そんな奮闘の日々を繰り返すうちに、父親と息子の絆ができてくるのです。
しかし、そんな矢先、出て行った母親が「子供を引き取りたい」と現れます。ここから「父クレイマーさん vs 母クレイマーさん」が、はじまるわけです。
父の気持ちも、母の気持ちもわかる。一番の被害者は子供
僕は、この映画を夫婦で交互にみました。今、1歳の息子がいるので、息子をじっとさせたまま2時間もある映画を見ることはできません。ですので片方が子守をしながら、まずは僕が見て面白かったので、翌日嫁さんにも見てもらいました。
見終わったあと、「父親の気持ちもわかるけど、母親の気持ちもわかる」といった具合に、次々と意見が飛び出しました。映画を見終わったあとに、「良かったか、悪かったか」という話をすることはよくありますが、感想を超えた意見が次々と出てくるというのは珍しいな、と感じました。
結論としては、「夫婦の離婚に巻き込まれる子供が一番かわいそうだね」というところで、お互いの意見が一致。僕たちが育児中の当事者ということもありますが、非常に考えさせられる映画でした。
「子育ては時間だよ」。親子の絆は、時間に比例する
映画「クレイマー、クレイマー」をみて、ふとあたまに浮かんだ別の映画があります。それは2013年公開の日本の映画、「そして父になる」です。
体当たりで育児に奮闘するリリーフランキーが、質の高い教育にこだわる福山雅治に、「なに言ってんの? 時間だよ、子供は時間」という名シーンがあります。
クレイマー、クレイマーで、息子と父親の絆が深まってゆく様子をみながら、そんなリリーフランキの言葉が浮かんできたのです。日本もアメリカも同じく「育児は時間」だと、映画を通じて再認識させられました。
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今の日本に、ぴったり当てはまる映画
「クレイマー、クレイマー」は古い映画ですが、それほど古さを感じませんでした。というのも、今の日本が抱える夫婦・家族の問題点を表現しているような映画でしたので、どちらかといえば現代的な映画だと思えました。
アメリカでは約35年前に社会問題にもなったこの映画ですが、日本人にとっては、今、見るとちょうど良いのではないでしょうか。とても良くできた映画です。あなたの意見は夫派? 妻派? それとも子供派? ぜひ夫婦でご覧ください。
実に名作です。