朝日新聞は、2019年11月13日の朝刊一面で「離婚後の養育費」について報じました。
ひと言でまとめると、こんな内容です。
養育費安すぎ! 受取額が増えるよう新基準を発表するぞ
夫婦関係が上手くいかないなどの理由で、「離婚してシングルマザー(シングルファーザー)として頑張ろう」と検討している方にとっては朗報と言えるニュースです。反面ネットでは「離婚するなら今月中だ」「払わなければいい」など、ひどい意見もあります。
今回は、養育費についての基礎知識、そして現在抱えている問題を交えながら「養育費増額のニュース」をお伝えします。
目次
朝日新聞「養育費、12月に増額の方向 ひとり親世帯の貧困に対応」
離婚訴訟などで広く使われている養育費の算出基準について、最高裁最高裁の司法研修所が今よりも受取額が増える方向で、新たな基準を策定する方針を固めた。2003年に示された現行基準には「金額が低く、母子家庭の貧困の原因になっている」との批判が強く、社会情勢に合わせた改定を行うことにした。12月23日に詳細を公表する。
朝日新聞(2019年11月13日 朝刊)より引
朝日新聞は賛否両論の声が高いですが、「育児・子育て」のことに関しては、率先して報道をしている印象を僕は持っています。今回も朝日新聞以外では報じていませんでした。
離婚にまつわる「養育費」について
結婚するときは、離婚のことなんて考えていないので、ほとんどの方が初めて「養育費」に直面します。
養育費とは一体なんなのか?
要点をわかりやすくまとめました。
夫婦は離婚すれば他人になれますが、親子関係は切れません!
離婚届を出す前に決めておく、子どもに関する4項目
未成年の子どもがいる場合、離婚する前に、以下の4つを決めておく必要があります。
- 親権者(父親なのか、母親なのか)
- 養育費(夫婦は他人になっても、親子関係は切れません)
- 子どもの戸籍と姓(離婚しても通常はそのまま。変更する場合は要手続き)
- 面接交渉権(離れて暮らしても子どもとは会えるのか?頻度は?など)
夫婦間の話し合いでまとまらず、調停や裁判になった場合、「子どもの幸せ」を最優先に決められることになります。
たとえば、虐待をしていたり、浮気をして家庭をおろそかにしていた場合は、親権が取れなかったり、取りづらかったりする、ということです。また、妊娠中に離婚する場合は、基本的に母親が親権者になります。
養育費とは
養育費とは、子どもが生活していくために必要な費用のことです。
夫婦は離婚をすると他人になりますが、親子関係は離婚をしても切れません。また、離婚をしても親は子どもを扶養する義務があります。そのため、離婚・別居にともない、離れて暮らす側の親が養育費を支払う必要があるのです。
養育費算定表について
養育費の金額は離婚にともない夫婦間で協議しますが、合意できなかった場合は、調停や裁判で決めることになります。
しかし、養育費の金額についての法律はありません。
そのため現在、東京と大阪の裁判官が共同で研究し、2003年に発表した「養育費算定表」が広く活用されています。これは「子どもの数」「子どもの年齢」「夫婦の収入」に基づき算定します。
今回報じた朝日新聞では、以下のような事例が掲載されていました。
・夫 年収450万円
・妻 年収100万円
・子ども 15歳<養育費 8万円〜10万円>
・夫 年収550万円
・妻 専業主婦
・子ども 10歳
・子ども 8歳
養育費の相場 月2〜4万円が最多
司法統計によると、全国の家裁での調停や審判で昨年、養育費を支払うことを決めた件数は約3万1千件。毎月の支払額は2万円超4万円以下が約1万件(33%)と最多で、1万円超2万円以下が約5500件(18%)、4万円超6万円以下が約4700件(15%)だった。
朝日新聞(2019年11月13日 朝刊)より引用
- 2万円〜4万円(33%)
- 1万円〜2万円(18%)
- 4万円〜6万円(15%)
つまり、調停・裁判で決められた養育費の半数は、4万円以下ということです。
ここ、最初のポイント! 養育費が安くて、ひとり親家庭の貧困の原因になっている、ということです。
養育費を払わない! 7割超が受け取っていない
支払われなければ、法的には強制執行も可能だが、手続きの複雑さなどから実際には泣き寝入りするケースが多い。2016年に厚生労働省が公表した調査結果では、母子世帯の71・4%が養育費を受け取っていないと回答。
朝日新聞(2019年11月13日 朝刊)より引用
養育費は、そもそも約束どおり支払われていないという問題も抱えています。
ここ、次のポイント! 調停・裁判で養育費が決まっても、7割以上は支払っていません。しかもほとんど泣き寝入りせざるを得ないのが実情で、逃げ得状態……
養育費がもらえない! 未払いを防ぐための強制執行認諾約款付き公正証書
養育費の未払い問題。最初は受け取っていたけど、後々転職したり再婚したりして払ってもらえなくなることがあります。その場合、相手に「払っても欲しい」と催促することになりますが、元夫・元妻に連絡を取りたくない、連絡先がわからないなど問題が発生することがあるでしょう。
また、連絡が取れたとしても、相手が拒否したり、のらりくらりと逃げられると、どうしようもありません。
そうしたことを防ぐため、養育費に関しては「強制執行認諾約款付きの公正証書」を作るようにしましょう。離婚する際、お互いの取り決めを「離婚協議書」にまとめることがありますが、これだと弱いです。
強制執行認諾約款付きの公正証書があれば、銀行口座から預金・給与の差し押さえを強制執行することができるのです。
また公正証書は、原本が公正役場に保管されているので、紛失・偽造のリスクもありません。
養育費が払えない…… 家裁に減額調停
逆に、養育費を払う側で、金銭的な問題でどうしても払えなくなった場合は、どうすれば良いのでしょうか。
この場合、まず元妻・元夫に連絡をとり、事情を説明しましょう。また、「会いたくない」「揉めそうだ」といった場合は、家庭裁判所に「養育費減額の調停」を起こすこともできます。
黙って逃げるのだけは、踏みとどまってください。転職や健康問題などで収入が減るのはあり得ることなので、まずは「払いたいけど払えない事情」を伝えて再協議しましょう。
安すぎ! 新基準で金額は1.5倍に増える!?
2016年11月、日本弁護士連合会が養育費について新たな算定表を発表し、改善を求めました。収入など状況によって一定ではありませんが、現行と比べて1.5倍程度に増えると言われています。
これがそのまま採用されるかはわかりませんが、今回の指標と言えるでしょう。
新基準の公表は、2019年12月23日です。
また詳細がわかり次第、本記事に追記していきます。
ちなみに、すでに調停などで養育費が決まっていたり、支払いが始まっている方については、朝日新聞では以下のように伝えています。
すでに調停などで合意した夫婦が、新基準の適用を求めることも予想される。再度の調停も申し立てられるが、認められるかは個別の判断となる見通しだ。
朝日新聞(2019年11月13日 朝刊)より引用
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