毒親(どくおや)という言葉を、最近よく目にします。
毒……なんて、思わずビクッとさせられますよね。
この言葉は、アメリカのスーザン・フォワードさんの書籍「毒になる親 一生苦しむ子供」がきっかけで生まれました。スーザン・フォワードさんは「子どもの人生を支配し、子どもに害悪を及ぼす親」を「毒になる親(Toxic Parents)」と表現しています。
- Toxic(有毒な)
- Parents(親)
日本で「毒親」がキーワードとして広まったのは、2015年頃です。
さて、そんな毒親について、NHK総合の報道情報番組「クローズアップ現代+」で特集がありました(2019年4月18日放送「毒親って!? 親子関係どうすれば・・・」)。
僕が恐ろしく感じたのは、「毒親に育てられた子どもは、そのときだけでなく、大人になってからも苦しみ続ける」ということでした。
毒親とは具体的に何なのか?
親として、子として、どうすればいいのか?
放送された番組を紹介しながら、考えていきたいと思います。
番組キャスター武田真一、二児の父として涙
まず、番組の内容に触れる前に、非常に胸が詰まる内容であったことをお伝えします。
「私は毒親という言葉にものすごく抵抗があって、それを耳にするたびにですね、一人の親として本当にズタズタに切り裂かれるような痛みを感じるんです。親というのは、本当に愛情を持って子どもを育てているんですよ」
番組キャスターを勤める武田真一さん(51歳)が、放送中に涙を流すシーンがありました。武田真一さんは、ふたりのお子さんを育てる父親でもあります。子育てに一生懸命だからこそ、切り裂かれるような痛みを感じたのでしょう。
親の立場、子の立場。
決して他人事ではない、深く考えさせられる放送回でした。
毒親の特徴。過干渉、暴言・暴力、ネグレクト
毒親とは、アメリカの専門家が提唱した概念です。過干渉や暴言・暴力などによって子どもに重圧を与えたり、親の都合を優先し、子どもをかまわなかったりする親のことだとしています。
ここでのポイントは、子どもに干渉しすぎる「過干渉」も毒親に含まれるということです。子どもに良かれと思って言い聞かせたり、させてたりしたことが、子どもに生きづらさを感じさせ、それが大人になっても影響を与え続けてしまうのです。
以下が、毒親の特徴です。
過干渉
- 「〇〇大学に行きなさい」
- 「恋人と別れなさい」
暴言・暴力
- 「あなたにいくらかけたと思っているの?」
- 「親の言うことを聞け」
ネグレクト(育児放棄)・親優先
- 子どもにかまわない
- 食事や身のまわりの世話をしない
東ちづる、過干渉タイプの毒親に良い子を演じ続けてきた
番組にゲストで出演していた女優・タレントの東ちづるさんは、毒親に苦しめられてきた経験があるそうです。でも、子どもの頃は苦しいという自覚がなく、大人になってからわかった、と言います。
「こうするのが良いのよ」
「一番が良いのよ」
「頑張りなさい」
「愛される子になりなさい」
「優しい人になりなさい」
「ちゃんとしなさい」
「きちんとしなさい」
子どもの頃、母親からこうした言葉を言われ続けてきました。
東ちづるさんは、母親の言うとおりにすると褒めてもらえるので、褒めてもらうために良い子を演じていたそうです。
でも、大人になってから恐怖を感じました。
「これをいつまで続けるのだろう……」と。
東ちづるさんは、いつも母親の顔色をうかがっていたことに気づいたのです。
母親と一緒に、8か月に渡るカウンセリング
母娘関係を改善するため、東ちづるさんは決意し、親子でカウンセリングを受けました。その期間は8か月。
そこで母親は、「私は娘を苦しめていた」と自覚し、変わりはじめました。
カウンセリングで楽になったのは、娘のちずるさんだけではありません。母親も解き放たれて行きました。母としての肩書き、妻としての肩書き、それらをとっぱらって個人になりました。
お母さんをやって、妻をやって、地域の良い人をやって……と、良妻賢母で頑張ってきた人。そんな母は、カウンセリングを通じて「本来の自分はどう生きたいか」を思い出したのです。
カウンセリングを終えたお母さんは、翼が生えたように、「あれもやりたい」「これもやりたい」と色んなことを生き生きと始めた、と言うことです。
娘だけでなく、母親も、ずっと苦しんできたのです。
過干渉とはいえ、やっぱり親はわが子が心配
東ちづるさんの母親は、何も特別ではありません。親は、子どもの将来を心配して色んなことを言ってしまうものです。
「もっと英語を勉強したほうがいいんじゃないか」
「もっとITを勉強したほうがいいんじゃないか」
「もっとこうした方がいいんじゃないか」
しかし、心配して子どもを守るつもりが、過干渉になり、「押しつけ」になってしまうのです。
毒親に育てられると、どうなるか
- 過度に従順・反抗的
- 心身のトラブル・適応障害
- 育児や夫婦関係に支障
毒親に育てられた子は、親の顔色だけでなく、他人の顔色もうかがい過ぎる子どもになります。
そして、大人になってからもそれが続きます。たとえば、友人や恋人関係において何か辛い状況に陥ったとき、「私が我慢をすれば良いんだ」と考えてしまうのです。
また、毒親に育てられた子は、自分が親になったとき、今度は自分自身が毒親になってしまうことがあると言います。
「あんな親になりたくない」
そう思っていたはずなのに、知らずのうちに連鎖してしまうのです。
「私の親は毒親」と言う、子どもの本音
自分の親のことを「毒親」だと言う、子どもの本音は何なのか?
番組に出演されていた精神科医の岡田尊司さんは、こう言います。
「愛憎というのは背中合わせというか、裏表なので、毒親と言ってるということは、逆に言うと愛情を求めている。ありのままの自分を認めてほしいという気持ちの裏返しでもあるんだと思う」
子どもは、ありのままの自分を親から認められ、愛して欲しかったのです。
世界中が全員敵になっても、親だけは子どもを信じてくれる
では、どんな親であると良いのか。
それは、安全基地。
世界中が全員敵になっても、親だけは子どもを守ってくれる、信じてくれる。親が砦であり、最後の避難場所であるべきだと言います。
子への接し方で、注意すべきは以下の3点です。
- 子どもの安全を脅かさない
- ほどよい世話をする
- 子どもの思いを汲んで共感性を大事にする
これらに共通しているのは、親は子どもをコントロールしようとしない、ということですね。
番組の紹介は以上です。子どもの成長のため、自立のために、親はどうあるべきなのか。親子関係を俯瞰して、客観的に考えさせられる番組でした。
ありのままを愛する、と言うこと
最後に、僕が感じたことを少し。
番組では「ありのままの自分を愛して欲しい」という、子どもの気持ちが紹介されました。
この「ありのまま」というキーワード。
僕自身、育児本を読んだり、保育について勉強したり、仕事で子育ての専門家を取材したりするうちに、「子どもをありのまま愛する」というのが共通するキーワードであることに気づきました。
子どもは、やんちゃだったり、引っ込み思案だったり、性格は様々です。親は、子どものことを心配して補正しようとするかもしれません。でも、子どもにとって、それは負担なのです。
「僕は、私は、ダメな子なの?」
子どもの心に、自己否定感が芽生えてしまいます。勇気をくじかれた子どもは、自信を持つことができず、自立できません。
それよりも、親は子どものありのままの姿を受け入れ、そして愛することが、子どものためになるのです。
もしあなたが、子育てについて悩んだとき、まずは「ありのまま」というキーワードを思い浮かべてください。
「あなたは何もおかしくないよ」
ありのままを認めるところからスタートすることで、きっと良い親子関係が築け、子どもはのびのびと育っていくと思います。
アナと雪の女王のテーマソング、改めて良い曲ですね。子どもに勇気を与える名曲です。
戸惑い、傷つき、誰にも打ち明けずに悩んでた。それもやめよう。ありのままの姿を見せるのよ。ありのままの自分になるの。何も怖くないわ。
毒親に関しての、書籍、マンガ、インスタグラム
アルコール依存症の父親との顛末を描いた「酔うと化け物になる父がつらい」で世に衝撃と共感をもたらした菊池真理子さんが今度は毒親から生還した10人を取材してコミックにまとめました。
菊池さん自身も含めて登場する、有名無名の11人の人々が親から受けた傷はみんな違います。
アルコール依存症の親、暴言と暴力の親、価値観を一方的に押し付ける親、果てしなくお金をむしりとる親、そんな状況を見て見ぬふりする親……。その体験談は赤裸々。
「毒になる親」に傷つけられた子供の心は、歳を重ねても癒されない。悩む数千人の人々を20年以上にわたってカウンセリングしてきた著者が、具体的な方法をアドバイスする“現実の希望”にみちた名著。
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NHK総合「クローズアップ現代+」内で紹介されていた、20代女性のインスタグラムアカウントです。母親と二人暮らしだった自身の体験を漫画に綴っています。
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母に心を引き裂かれてという本と
モラハラ資料というブログを読んでください。
はじめまして。コメントありがとうございいます。
当事者(子の立場)にとっては、生死に関わるほど深刻な問題ですので、キツく感じる「毒親」よりも遥かに恐ろしく感じたり、嫌悪感を覚えたりすることはありそうですね。本「母に心を引き裂かれて」、ブログ「モラハラ資料」も、知りませんでした。貴重な情報ありがとうございます。