子どもにスマートフォンやゲーム機を与えて、後悔したことはありませんか?
早いご家庭では、0歳でデビュー。まずは親が与えた「泣きやまし系」や「タッチ系」のアプリを使い始めます。そして1〜2歳になると「YouTube」の動画を見始めます。車や電車が走っている映像だったり、きかんしゃトーマスやアンパンマンのおもちゃを使ったコマ撮り・アテレコの映像だったり。
そして、3〜4歳になり、ふと気づけばゲームに夢中に。
最初は、子どもが大人しくしてくれたり、その間に家事ができたりして、「スマホを与えると助かるなぁ」という気持ちだったかもしれません。
しかし、自我が発達し、自己主張が強くなってくると、何十分も何時間もやりたがります。そうすると、これまで親が与えていたスマートフォンやゲーム機を今度は取り上げ、「いつまでやってるの!」「もうさせません!」と、叱ってしまうわけです。
ゲームは全てが悪ではありませんし、自分に自信をつける良い機会にもなります。今回は、そんな子どものゲームにまつわる話をお伝えします。
スマブラが起こした奇跡! 不登校の小学生を勇気づけた
まずは、小学生2年生で不登校になった男の子のエピソードをお伝えします。2年間、家でひきこもり、ゲームに夢中になっていました。
Twitterで話題になったのでご覧になった方もいるかと思いますが、任天堂のスマブラこと「大乱闘スマッシュブラザーズ」というゲームが、男の子に勇気を与えた話です。投稿者は、ゆうやん/Yuya Hosokawaさん(@yuyan_mtg)。
まずは、ご覧ください。
スマブラの話で必ず思い出すのが、小学生の時に不登校だったT君。小2から不登校になって一度も学校に来ず、俺は顔すら見たことなかったのだけど、小4の時に「プリントを渡しに行ってくれ」って先生から頼まれて、たまたま俺が行ったら、お母さんが出てきて、その時スマブラの音が聞こえた。
— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
「お、スマブラだー」って呟いたらお母さんが「あ。知ってるの?遊んでく?」と聞かれて、俺が快諾すると、お母さんが嬉しそうにT君に話しに行く。10分ぐらいして家に上がる許可が出て、靴を脱いで中へ。初対面のT君にコントローラーを渡されて、ろくに会話もしないままゲームスタート。
— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
「アイテムなし、ストック3で良い?」奇しくもT君が提案したルールは、いつも俺が友達と遊んでるものと同じだった。
そしてキャラ選択。
俺が選んだのはカービィ。色ももちろん青に変更した。大してT君は…
プリン!?
当時、罰ゲームでなければ誰も使っていなかったキャラだった。— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
「場所は?」「ハイラルで」俺のお気に入りのステージ。
そして始まる俺とT君の戦い。
結果はT君の圧勝。一度も機を減らすことすらできず、それどころか58%ぐらいしかダメージを蓄積できずに、俺は敗北した。
こんなにボコボコにされたのは初めてだった。
「もう1回!」
俺がそう言うと、T君は頷いた。— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
結局、3時間は遊んでいた。一度も勝てなかったどころか、一機すら削ることができなかった。
19時前になり、お母さんがT君を食事に呼ぶ。
「食べてく?」と聞かれたが、断った。今日は家でちらし寿司だから、給食もほどほどにしろと親父に言われていたのだ。
だが、こう言った。
「また来ます」— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
次の日、学校でT君の家でスマブラをしたことをクラスで話しまくった。「3時間で一回も吹っ飛ばせなかった。しかも使用キャラはプリン」その言葉にクラスの友達は興味津々だった。
早速その日の放課後、6人でT君の家に行った。
お母さんは少し驚いていたが、6人を迎え入れてくれた。— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
俺以外の一人ずつがT君に挑戦する。まずは藤原君。使用キャラはネス。結果はもちろん、T君の圧勝だった。
「もう1回やらせて!」藤原君が言う。だが2回目の結果も、0-3。
ここで全員に火がついた。「俺家からコントローラー持ってくる」吉田君がそう言って、家から出た。— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
戦いを見ているのが、みんな我慢できなかったのだ。早くT君と遊びたかったのだ。
間も無くして、吉田君がコントローラーを2つ持ってきて、4人対戦ができる状態になった。その間、菅原君があっという間に2回負けていた。
吉田君が「チーム戦をやろう!」と言って、T君俺vs吉田君近藤君の戦いに。— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
チーム戦でも、T君は凄まじい強さだった。俺なんていてもいなくても同じ。二人ともT君を倒すのに夢中で、実際俺は相手にされていなかった。結局二人を同時に相手しても、T君は1ストックも減らすことはなかった。
そこからは、1:2の戦いが続く。
だが3時間で、誰もT君の機を減らすことはできなかった。— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
この日も、ゲームの終わりはT君のお母さんの一言。「そろそろご飯よ。みんなも食べてく?」だった。全員が頷いた。
良いカレーの匂いに誘われたからではない。みんな、T君に興味があったのだ。
「こんなたくさんでご飯食べないから、狭くてごめんね」と言われたが、気にならなかった。それよりも。— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
「なんでそんな上手いの!?」「あれどうやってやんの?吹っ飛ばすやつ」
みんなそれぞれ、聞きたいことが山ほどあったのだ。結局、ご飯の後にも1時間ほどゲームをやって、家に着いたのは21時だった。親父にしこたま怒られた。
翌日から、T君はプリン師匠と呼ばれるようになった。
— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
それから、放課後はプリン師匠の家に行くのが決まりになっていた。毎日遊びに行ってもT君のお母さんは笑顔で迎え入れてくれた。
T君に聞いた方法で、攻撃を避ける。攻撃するタイミングをしっかりと見極め、無駄な隙を与えない。ジャンプの大きさも考える。
そして数日後、ようやくその時は訪れた。
— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
ついに、T君から一機奪うことに成功したのだ。誰が奪ったかは正直覚えていない。その瞬間、俺はゲーム画面よりも、脳裏に焼き付いた映像があったからだ。
T君が、その時初めて悔しそうな表情をした。それが嬉しかったのだ。結局、T君の家には毎日通っていた。ある日が来るまで。
— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
その日の朝、いつものように俺は「プリン師匠の家、今日誰が行く?」なんて話をしていた。
朝礼の時に、先生が言った。
「今日から、T君が登校を再開します」
そう言うと、T君が扉を開け、教室に入ってきた。
家で見るT君より少し小さく見えた。だが、それは紛れもなくT君、いやプリン師匠だった。— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
「あ!プリン師匠!」
「師匠!」
俺たちがそう言うと、師匠は少し笑った。T君が学校に来たことで、他のクラスのスマブラ勢の家にもT君を連れていけるようにもなった。
だが、結局T君よりスマブラが強い人は、一人も学年にいなかった。T君は卒業する頃には、学年で有名人だった。
— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
俺があの時T君と仲良くなれたのは間違いなくスマブラのおかげだ。
口下手でも無口でも関係ない。「ゲームが強い」という事実は、すべてを吹き飛ばせる。
ゲームが勉強に役立つか、オリンピック種目に値するかはわからない。
だがゲームには、無限の魅力がある。俺はT君との出会いでそれを知った。— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) 2018年6月14日
自発的にハマる経験は、社会人になっても活かされる
あなたは、子どもの頃、何かに夢中になった経験はありませんか?
僕は、小・中学生の頃、コンピュータに夢中になりました。まだインターネットができる前で、WindowsやMacもなかった時代です。父親がNECのPC-6001というマイコンを買ってきたのがきっかけで、僕はそれを独占してプログラミングやゲームに没頭しました。
次に、高校生の頃、音楽にどハマりました。FMラジオ番組をエアチェック(録音)し、音楽を貪ったのです。高校生の頃、自分が通っている高校の全学年の中で、ダントツで音楽に詳しい自信がありました。洋楽・邦楽を含めたヒットチャートTOP100を全曲把握し続けているだけでなく、古い曲や関連アーティストも掘り起こしていきました。
結果、30歳を過ぎて人生の壁と向き合わないといけなくなったとき、「あ、そうだ。自分の好きなこと、得意なことを仕事にしよう」と、新卒で就職した会社を辞め、自分の好きを活かした道へ進むことを決意できたのです。あのとき、もし両親がパソコンを取り上げたり、音楽なんて役に立たないと否定していたら、「僕はどう壁を乗り越えることができたのか」と怖くなります。
あなたも「今の自分があるのは、子どもの頃に夢中になったアレがあるからだろうな」ということはありませんか?
夢中になった行為は、いつか自分の助けになります。また、没頭するという行為そのものもが良い経験にもなります。没頭は、自分の「やりたい!」という意思がないとできません。親から「勉強しなさい」と強要されて、寝食を忘れて毎日15時間も勉強にハマっていた……なんてことはないでしょう。
言われたことを受け身でやるだけでなく、自発的にやりたいと思って行動を起こす能力も大事なのです。
子どものゲームをやりたい気持ち、まずは一旦受けとめる
冒頭に書いた、子どものゲームをしたがる、ゲームをやめてくれない問題。
これは子どもの自発的な意思です。
それを頭ごなしに否定するのは、親は思考停止に陥っていると言えます。まずは、ゲームをしたいという気持ちを受けとめてみてはいかがでしょうか。
親「どうしてもやりたいの?」
子「うん」
親「何が面白いの?」
子「えっとね。それは……」
まずは、子どもの気持ちに寄り添ってから、ゲームについてどうすべきかを考えれば良いと思います。
先週末、4歳の息子とこんなやりとりがありました。
子「ねぇパパ、iPhoneでゲームやりたい」
親「今は、やって欲しくないなぁ」
子「えぇー、ちょっとだけ!」
親「それじゃぁ、これからお出かけしたいから10時35分までならOK! もし、そのルールが守れるならやってもいいよ。もしルールが守れなかったら、パパは悲しいよ。どうする?」
子「うーん、ゲームやる!」
そして10時35分。僕が息子のそばに行くと、「もう10時35分になった?」と息子はパパにたずねました。僕がうなずくと、自分の意思でをiPhoneをオフにしたのです。
息子はこのとき、「約束を守ることができた」と自信がついたと思います。
毎回できなくても良いんです。2回に1回でも、3回に1回でも。子どものゲームをしたいという気持ちを、子どもの自信につなげることができました。
子どもを抑圧させると、別のところで爆発してしまいます。幼い子どもだと、保育園や幼稚園のお友達を叩いたり、噛み付いたり。小学生以降だと、不登校で引きこもりになったり。親にキレたり。
「ゲームやりたい」
親としては不安な気持ちもありますが、いつまでも隠し通せるものではありません。子どもの意思を尊重して、親子関係を深めたり、子どもの自信に変えたりする、きっかけにする方が良いのではないでしょうか。
今回はゲームの話をしましたが、これはゲームだけに限りません。一生続く、なんでも相談しあえる親子関係の方が良いじゃないですか。その最初の一歩というところで、親としても学んで行きたいところです。