2000年代に入ってから使われるようになった、育児をする男性を表す言葉「イクメン」。
僕はこの言葉が、好きではありません。
なぜなら、「基本的に、育児は嫁(母親)がやるものだけど、俺は男だけど育児やってます(ドヤ顔)」的な、いやらしさを感じるからです。
でも、日本の歴史を振り返ると、昭和時代は学校で「夫は仕事、妻は家事育児」と明確に分けて教えていたのです。
2015年から、中学校の教科書に「イクメン」
来年4月から使われる中学校の教科書に育児を積極的に行う男性、“イクメン”ということばが初めて登場し、ライフスタイルの変化や新しい家族関係についての記述が多く盛り込まれています。
中学校の教科書に“イクメン”初登場:NHK NEWSより一部引用(【追記】記事公開終了しました)
なんと今年2015年4月から、中学校の家庭科の教科書に「イクメン」という言葉が掲載されているそうです。厚生労働省が「イクメン(育MEN)プロジェクト」を支援しているので、政府公認キーワードとして掲載の決め手になったのかもしれませんね。
新しくなった教科書には、なかなか良いことが書いているようなので、NHK NEWSよりご紹介します。
昭和33年「家庭の仕事は、女性がこなすもの」
57年前、昭和33年(1958年)の家庭科の教科書です。この頃は高度成長期といわれる時代で、「家事労働の仕事は普通、主婦が中心となって行われている」と書かれていたそうです。
家事 = 主婦
という価値観が、一般的だったということです。
- 夫は仕事
- 妻は家事
平成14年「母親も外で働く、共働き時代」
44年後の平成14年(2002年)になると、家庭科の教科書に、はじめて女性が出勤する姿が描かれるようになりました。
イラストから、父親・母親が外で働いていて、家では祖母が子守りをしている、という様子がうかがえます。
- 夫婦共働き
- 実家と同居
平成27年「家事・育児は、男女協力型に」
そして、今年平成27年(2015年)に入り、いよいよイクメンという記述も登場し、男性も家事や育児を行うものである、と教科書で教えられることになりました。あたらしい家庭科の教科書には、娘と一緒に食器洗いをする父親のイラストや、赤ちゃんに離乳食をあげる父親の写真が掲載されています。
これまでは夫婦共働きであっても、家事・育児は女性が担当という社会の風潮がありました。また、今のように育児休業をとる男性というのも聞いたことがありませんでした。それが変わりつつある、ということです。
- 夫が、育児に参加
- 夫が、育休を取得
ひとり親家庭や、血のつながらない中で育つこともある
特に良いなと思ったのは、この部分です。
家族には、いろんな形があると説明しています。両親のいる家族、単親の家族、祖父母のる家族。また、血のつながらない人びとの中で育つこともある、と。
子供たちは、自分たちが実感している社会の範囲はまだ狭く、知らないがゆえに、ときに差別的になってしまう場合があります。いくらイクメンを推奨しても、父親がいない家庭でくらす子供もいるでしょう。また、虐待や死別により親と一緒に暮らせない子供もいるでしょう。
家族にはいろんな形があるんだよ、と教えることは、とても良いことだと感じました。
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1986年の男女雇用機会均等法から30年、ようやく家庭内でも男女平等に
男女平等・男女同権という言葉が日本でも当たり前になって久しいですが、家庭科の教科書の移り変わりをみると、社会制度に比べて、家庭内の改革はずいぶん遅れをとっている印象を受けます。
本来であれば、男女雇用機会均等法が施行された1986年(昭和61年)頃から、「家庭内でも家事・育児は分担しましょう」という流れになってもおかしくないはずです。しかし、それから約30年たって、ようやく男女平等という意識になってきたということです。
とはいえ、イクメンという言葉で「男性の育児にスポットライト」を当てているので、真の平等ではないんですけどね。男性は担ぎ上げられると誇らしげになりがちです。おだてるという意味では、イクメンという言葉はアリかもしれませんね。笑
【家庭科必修について】男子が中学校・高校で家庭科の授業が始まったのは、1990年代半ば
30代後半より上の男性は《基本的に料理が出来ない》そうです。なぜなら「中高で家庭科が必修ではなかった」「夫婦共働きの価値観がなかった」という時代背景があるからです。
先日、日経DUALさんからの依頼で田中俊之さん(大正大学心理社会学部准教授)を取材させて頂いた際、このお話を聞きました。
— 北野 啓太郎@フリーランスライター (@KeitaroKitano) 2019年5月13日
FF外から失礼します。
中学では男女共に「技術科」(男女とも家庭科という教科はなし)を履修させる計画だったのですが、女子教育関係者が裏で手を回して男女別の技術・家庭科を導入させた経緯があります。
Wikipedia:技術・家庭— ぱぴぃ (@pappy88888) 2019年5月25日
現在、学校で「イクメン」が教えられているとはいえ、実はその児童・生徒の父親はイクメンでない可能性が高いです。
なぜなら、かつて家庭科の授業は男女別だったからです。男子「技術」・女子「家庭科」と、分かれていました。
それが、1993年に中学校で、1994年に高校で、男女ともに家庭科を必修するように変わったのです。
1980年代以前に生まれた男性は、学校で家庭科を習っていません。料理などの技術面だけでなく、そこには「男は家庭内で料理をしなくて良い」というメッセージも含んでいます。
そのため、1970年代以前に生まれた男性の多くは、料理が苦手だったり、家事をしようとしなかったりします。でもそれは、学校教育の結果でもあるのです。
男性にとって、今は過渡期と言えます。