日本では、生後3ヶ月の時点で完全母乳で育てている赤ちゃんは、厚生労働省の調査によるとおよそ55%です。そして、約35%が母乳と人工ミルクの混合で、残りの10%が人工ミルクのみという割合です。
- 完全母乳 55%
- 混合 35%
- 人工ミルク 10%
参考リンク
→【図解・社会】母乳育児の割合(2016年8月):時事ドットコム
日本では粉ミルク、海外には粉と液体の両方がある
さて、その人工ミルクというのは、日本においては粉ミルクのことを言います。日本人のほとんどは、母親による「授乳」か「粉ミルク」で、赤ちゃんが育てられていると思っているでしょう。
しかし、海外では紙パックやペットボトルに入った乳児用の液体ミルクが販売されているのです。
紙パックのミルクは哺乳瓶に移し替えて飲む。ペットボトルのミルクは、キャップを外せば哺乳瓶の吸い口(ニップル)が取り付けれるようなっているなど、とても手軽です。
乳児用液体ミルクの利便性は、ドイツ人と国際結婚したドイツ在住日本人女性のブログ「国際結婚したのはドイツだ?」に、その体験記が書かれています。びっくりするほど簡単・便利!
粉ミルクの何が面倒って、
1. お湯を一回沸騰させて
2. 50度くらいまで冷まして
3. 粉ミルク入れて
4. 更に人肌まで冷ましてって、何分かかるんじゃい。赤子は今泣いとるのよ。
液体ミルクなら、
1. いちおう振って
2. 開けて(キャップを開けて、アルミの蓋も剥がす)
3. 人肌まで温めて
4. 哺乳瓶のニップルを装着すれば完了!(口径3cmの通常サイズであればOK)温める作業はあるにしろ、粉ミルクよりは数段早くあげられます。
違法ではないけど、日本ではなぜか作られない液体ミルク
おぉ、こんな便利なものが!
でも一体なぜ、赤ちゃん用の液体ミルクが日本にないんだ!?
今年2016年4月、九州を襲った熊本地震が発生した際、フィンランドから日本に救援物資として液体ミルクが送られました。被災地では、きれいな水や温めるための火が確保できなかったり、ストレスで母乳がでにくくなったり、他人がミルクをあげたりすることもあるでしょう。この液体ミルクはとても重宝したそうです。
ところで、もし液体ミルクが日本で規制されているのであれば輸入できないはずですよね。液体ミルクは違法であったり、禁止されている訳ではないのです。その証拠に当時衆議院議員だった小池百合子さんが、フィンランドからの液体ミルクの支援に関わっていました。東京都知事となった今も「日本でも液体ミルクを普及させたい」と言及しています。
また、Amazonジャパンでも液体ミルクの平行輸入品が販売されています。200mlのボトル1本が約1,000円と、異常に高いのですが……。
では、なぜ便利な液体ミルクが日本で販売されないのか? その理由については、粉ミルク「チルミル」や「はぐくみ」をつくる森永乳業がこのように説明しています。
Q. 「液状の乳児用ミルクは作らないのですか?」「海外にはそのまま使える液状のミルクがあるのに、国内で発売しないのはなぜですか?」
A. 現在の法律では液状の育児用ミルクは「乳幼児用のミルク」としての規格基準が設けられていないため製造・販売は出来ません。
一方で、調乳用の水が不要な液状ミルクは、簡便性、災害時対応での利点が認められることから、当社ではこれまでも研究を行ってきました。すぐに発売することは難しいですが、今後も検討を続けていきたいと考えています。
「法律で安全基準が定められていないから」というのが液体ミルクを製造・販売しない理由だとしています。
しかし安全基準というのは本来、既に流通している物に対して安心・安全を守るために厳しい基準を設けたり、メーカーが新たな商品を流通させるにあたって基準が作られたりするものではないでしょうか。
メーカーが「基準がないから作らない」という《待ちの姿勢》なのは気になります。粉ミルクの方が儲かるなど、積極的にならない理由があるのかも知れませんね。
これは液体ミルク(infant formula : ready to feed)のCM。ペットボトルから哺乳瓶に入れ替えるだけ。パパと赤ちゃんのお出かけの時でも安心です。
いよいよ、日本でも乳児用液体ミルクが販売されるかも
そんな中、先日このようなニュースが報道されました。いよいよ日本でも液体ミルクを日本が製造・販売されそうです! 年内に議論をまとめ、安全基準などの準備を進めるとのことです。
政府は、国内での販売が認められていない乳児用の液体ミルクを解禁する方向で検討に入った。
(中略)
内閣府の男女共同参画会議の下に設けられた男性の意識変革などに関する専門調査会では、近く液体ミルクの解禁に伴う課題整理などの議論を始め、年度内に結論をまとめる方針だ。厚労省などは、こうした議論を踏まえて業界側に安全確認試験の実施などを求め、環境が整えば、省令の規定を改正する方向で調整している。
乳児用の液体ミルク、解禁へ…育児の負担軽減 : 読売新聞
(【追記】記事公開終了しました)
乳児用液体ミルクが販売されれば、様々な場面での活躍が見込まれます。
- 災害時の備蓄、救援物資として
- 育児家庭の避難用品として
- お湯やきれいな水が確保できない場所で
- 夜泣きのとき
- 母乳がでない、でにくいとき
- 母親以外の者が乳児の面倒を見るとき
- 保育園など乳児施設で
いずれにせよ、粉ミルクと液体ミルクが選べるのはありがたいです。海外では当たり前のように売っている液体ミルク、日本でも早く選択できるようになるといいですね。2017年以降に期待です!