子どもをどういった環境で育てるのが良いかについて、育児・子育て中のママパパとして思い悩む方は多いです。
「学力と財力でふるいに掛けた、私立・国立中学へ進学させたい」
「不良やバカとは関わって欲しく無い」
こうしたことは口には出せなくても、心の中では「わが子は良い環境のもとで教育を受けさせたい」と願うのが親心でしょう。親は子どもに整った環境を与えるのが務めだ、と。
しかし、その良かれと思った行為が裏目に出て、将来グローバル社会で活躍できない大人にしてしまうリスクがあるのです。先日、社会派ブロガー・ちきりんさんのVoicyを聞き、大変な衝撃を受けました。
🇮🇳この考察は凄い!
英語力&理数力のハイブリッドだけではない、インド人大躍進の理由。特に一生懸命に子育てをしているママパバは聞いて欲しい。ハッとさせられますよ😳
2022/10/30 スナク氏が英国首相に。インド人が世界を制す? – ちきりん @InsideCHIKIRINhttps://t.co/3ano3MsGIr#Voicy
— パパやる (@papayaru) October 30, 2022
インド人はなぜ世界中で活躍できるのか? イギリスのスナク首相、GoogleのピチャイCEOなど
ちきりんさんは、2022年10月30日配信のVoicy「スナク氏が英国首相に。インド人が世界を制す?」で、インド人が世界中の大躍進している2つの理由を解説しました。
ひとつ目は、英語力と理数力のハイブリッドなのですが、2つ目の理由が思いがけない考察で、僕はガツーンとやられました。
補足や僕の意見を交えつつ、ちきりんさんが番組内で伝えていたポイントをご紹介します。
イギリスの新首長リシ・スナク氏はインド人
2022年10月24日、イギリスで与党・保守党の新党首に選出されたリシ・スナク元財務相が国王チャールズ3世の任命を受け、翌25日首相に就任しました。
スナク氏は、英国史上初のインド系の首相です。
スナクは1980年5月12日にハンプシャーのサウサンプトンで、ケニア生まれの総合診療医の父と、タンザニア生まれの薬剤師の母の長男として生まれた。祖父はインドのパンジャーブ出身で、1960年代に東アフリカからイギリスへ家族とともに移住している。
ところで、スナク首相はかつてはIT系で知られる方でした。ITコンサルやソフトウェア開発などを行うインドに本社を置くインフォシスの創業者で、スナク氏はインドのビル・ゲイツとも称されています。
Google、Adobe、Microsoft、IBMのCEOもインド人
インド人の活躍は近年とても目覚ましく、特にテック系企業ではインド人が会長やCEOに就任しています。
「インド人は99×99までの掛け算の暗算ができる」
なんてよく言われましたが、暗算程度で驚くのは昔話。今やIT系のトップにインド人がずらりと並んでいるのです。
グーグルのサンダー・ピチャイCEO
タミル人の両親のもと、インドに生まれる。子供時代をマドラス(現在のチェンナイ)で過ごす。2004年にGoogleへ入社。Google Chromeなどのプロダクトマネジメントに携わった。2015年、Googleの持株会社Alphabetの設立に伴い、Googleの最高経営責任者に任命された。
アドビのシャンタヌ・ナラヤン会長、社長兼CEO
ナラヤンはインドのハイデラバードでプラスチック会社を経営していた父とアメリカの文学を教えている母の間に二番目に生まれた。テルグ語を話す家族で育った。
ハイデラバードのハイデラバード公立学校に行った後、オスマニア大学工学部の電子工学と通信工学の学士号、カリフォルニア大学バークレー校のMBA、オハイオ州ボーリンググリーン州立大学のコンピュータサイエンスの修士号を取得した。
卒業後、Appleに入社。アップルでは、シリコングラフィックスのデスクトップおよびコラボレーション製品のディレクターを務めた後、インターネットを介したデジタルフォトシェアの概念を開拓した「ピクトラ (Pictra Inc.)」を共同設立した。
1998年に製品リサーチの副社長としてアドビに入社。
Microsoftのサティア・ナデラCEO兼会長
サティア・ナデラ(英語: Satya Nadella、1967年8月19日 – )は、インド出身のアメリカの実業家。マイクロソフトCEO兼会長。1967年8月19日、インド・ハイデラバード生まれ。テルグ語が母語のヒンドゥー教徒家庭に生まれる。名のサティヤ(Satya)は、梵語で「普遍」「絶対的な真理」「実在」などの意。
IBMのアービンド・クリシュナ会長兼CEO
Arvind Krishna is an Indian-American business executive serving as the Chairman and CEO of IBM. He has been the CEO of IBM since April 2020 and took on the role of Chairman in January 2021. Krishna began his career at IBM in 1990, at IBM’s Thomas J. Watson Research Center, and was promoted to Senior Vice President in 2015, managing IBM Cloud & Cognitive Software and IBM Research divisions. He was a principal architect of the acquisition of Red Hat, the largest acquisition in the company’s history.
Wikipedia – Arvind Krishna より引用
(日本語訳)アービンド・クリシュナは、IBMの会長兼CEOを務めるインド系アメリカ人のビジネス エグゼクティブです。彼は2020年4月からIBMのCEOを務め、 2021年1月に会長に就任しました。 2015 年に上級副社長に昇進し、 IBM Cloud & Cognitive Software およびIBM Research部門を管理しています。彼は、同社の歴史上最大の買収であるRed Hatの買収の主任アーキテクトでした。
【インド人がすごい理由 (1)】理数力と英語力、グローバル企業が求める2大スキルを持っている
インド人が世界で活躍できる理由の一つは、理数力と英語力。
インドのエリート達には、グローバル企業で活躍するための2大スキルといわれる数学をベースとした理系スキルと英語スキルが叩き込まれているとのこと。
またインドの学校は基本的にはヒンディー語ですが、エリートが通う学校では中・高校から英語で授業を受けるそうです。そして、インド工科大学というインド中に関連校がある非常に競争率の高い大学を目指します。
ただ、日本のようにお金持ちの子どもで塾に通わないと入れないという大学ではなく、頭が良い、いわゆる天才児が朝から晩まで勉強をして入る大学だそうです。
インド工科大学(インドこうかだいがく、भारतीय प्रौद्योगिकी संस्थान, Indian Institutes of Technology; IITs)は、工学と科学技術を専門とする、インドの23の国立大学の総体、または、その各校である。国家的な重要性を有した研究機関と位置づけられ、研究水準の高さは国際的にも認められている。1947年のインドの独立後、インドの経済的・社会的進歩を目的として知的水準の高い労働力の育成が求められ、科学者と技術者を養成するために、1951年にジャワハルラール・ネルーにより第1校が設立された。
【インド人がすごい理由 (2)】混沌(カオス)の中で力を発揮できるスキルを持っている
インド人が世界で活躍できるもうひとつの理由が、混沌としたカオスな環境で力を発揮できるスキル。
理数力・英語力を持つ人なら、インドに限らず世界中にいますよね。それこそ英語が母国語のアメリカやイギリスにはたくさんいます。でも、インド人だからこその強みがあるのです。
世界中のあらゆる市場で勝ち抜いいくグローバル企業において、「私は整った環境で力を発揮できます」という人は全然通用しない。混沌(カオス)な中で力を発揮し、リーダーシップが取れる人が求められているのです。
インドはまだ開発途上国です。
アメリカやヨーロッパ、そして日本のように、塾があって、親も教育熱心な、整った環境で勉強したり生活したりできるわけではありません。混沌とした中で必死になって生き抜き、学力を身につけるのです。
ちきりんさんは、こう言います。
「日本では、整った環境で子どもを育てようとする親がたくさんいます。インターナショナルスクールに入れたり、中学受験をさせたり、中高一貫で親も含めた環境を整えて、友達もいい子ばかりにしようとしたり。さらに受験勉強やスポーツもいろいろとさせる。
そんな子が将来グローバル企業で働けるかといったら、働けない。
なぜなら、周りが見たこと無い人ばかりになるから。相手にしないといけない消費者はパキスタン人であったり、アフリカの人だったり、中南米の人だったり。日本のエリートは “そんな人に会ったことがありません” という状態で20歳くらいまで育ってしまう。これでは世界で絶対に勝てない」
つまり、世界が求めているのは……
「整えられた環境で育ってきた子ではありません。ぐちゃぐしゃの中で育ち、そこでトップになれた子、リーダーシップを発揮できた子。メンタルのやられれない子、強い子をグローバル企業は求めているのです」
GoogleのピチャイCEOは、大学院生になるまでパソコンに触ったことがなかった
ここまでが、ちきりんさんがVoicyでお話しされていたトピックスです。聞ける環境にある方は、ぜひVoicyの番組を聞いてみてください。
ところで、わが家には小学2年生の息子がいます。今、保護者のあいだでホットな話題は「中学受験を目指すかどうか?」です。
つい1年前までは、「授業中にしっかりと座っているだけでもすごい!」と喜んでいたのに、あっという間に親の理想がグンと伸びました。
中学受験をする場合、小学3年生の2〜3月頃から塾通いを始めるのが一般的です。ただし入塾試験があるので、それ以前から受験に向けたお勉強をはじめるのです。そのため、まだ2年生であっても親御さんのあいだでは騒つくのです。
ちきりんさんが言う、いわゆる「整った環境」を我が子に与えようと励んでいるわけですね。
さて、話はインドに戻ります。
GoogleのピチャイCEOは、インド南部の街・チェンナイで生まれ育ちました。両親は夫婦共働きで裕福ではなく、2間しかないアパートのリビングで兄弟と寝ていたと言います。家には自家用車はなく、10歳になるまで家に電話もなかったそうです。
ピチャイ氏はインド工科大学を卒業し、奨学金でアメリカのスタンフォード大学へ。アメリカの大学院に入学するまで、コンピュータに触れる機会もなかったのです。
I grew up without much access to technology. We didn’t get our first telephone til I was 10. I didn’t have regular access to a computer until I came to America for graduate school.
IT企業の巨人・GoogleのCEOは、大学院生になるまでほとんどパソコンに触ったことが無かったなんて驚きです! 彼のスピーチに「regular access to a computer」とあるので、おそらく大学院生になって初めて自分のパソコンを手に入れたのでしょう。
ピチャイ氏は、天才かつ努力家。それに加え、恵まれない混沌とした環境で生き抜いてきたからこその強さを持っています。それは先進国の整った環境で教育を受けてきた人には身につけられないスキルです。
これからの日本の教育について
子どもを持つ親として、私たちは子どもをどういった環境で育てるのが良いのだろうか。
記事冒頭で、以下のような例えを出しました。
「学力と財力でふるいに掛けた、私立・国立中学へ進学させたい」
「不良やバカとは関わって欲しく無い」
親としては子どもの邪魔になるノイズを取り除きたい一心かもしれませんが、避け続けることがマイナスに働くリスクがあることを知っておくべきでしょう。
いろいろな子がいる教室で人間関係を築く経験をしたり、動物園と揶揄されこともある公立中学校でリーダーシップを発揮するスキルを身につけたり、不良との付き合い方も学んだり。そうしたことが、今後ますます加速するグローバル社会で生き抜く力になるかもしれません。
特に日本は、人口が減少しはじめています。国内市場をターゲットとした企業が成長しつづけることは困難。世界を相手にグローバルに付加価値を提供できる企業が成長していくことでしょう。
「難関校の受験を突破し、いい学校を出て、大企業に入社できれば一生安泰。そんな時代は終わった」というのは、皆さんもきっと認識していますよね。
だからこそ、周囲の意見に惑わされたり、高学歴だけを盲信したりするのではなく、世界に目を向けて「どんな人が活躍しているのか? なぜ優秀なのか?」を知ろうとする姿勢が大事なのではないでしょうか。
「グーグルの社長は、大人になるまでパソコンを持っていなかったんだって。どうして社長になれたんだろうね」
まずは親子で、こうした疑問を持って意見を言い合うところから始めてみるのも面白そうです。