わが家の息子が小学3年生になり、周囲が中学受験についてざわつきはじめました。去年までは「中学受験は考えているの?」という探り探りの保護者同士の会話だったのが、「塾の夏期講習、親のサポートが大変だったよ」「やっぱり一流のSAPIXを目指すべきかな?」など、内容が具体的に。
大阪で生まれ育った僕は子どもの頃、中学受験をするなんて発想はありませんでした。学年で飛び抜けて頭が良かったO君という友人がいて、その子1人だけが私立中学校へ行ったくらいです。
今、東京で子育てをしながら、僕は無知だった中学受験の世界に驚いています。
ところで、ここ数年は「中学受験ブーム」なのだそうです。書店では中学受験の本がずらりと並び、駅前には大手進学塾が軒を連ねています。中学受験をテーマにしたマンガやドラマも人気です。
中学受験がブームになったきっかけは何なのか。先日、矢野耕平・著『令和の中学受験』という本を読み、なぜ今中学受験ブームが起きているのかの背景を垣間見ることができました。
今回の記事では、そのエピソードと僕が受けた中学受験界隈の印象についてお伝えします。
2016年から中学受験者数・受験比率が急増、大ブームに
まずはこちらのグラフをご覧ください。
首都圏では、2007年から2015年まで9年間かけて中学受験者数・中学受験者率が下がり続けています。しかし、2016年から逆転! グラフは2020年までと少々古いですが、それ以降も伸び続け、今や「史上空前の大ブーム」と報じるメディアもあるほどです。
【昔】1990年前後にも中学受験ブームがありました
2020年前後の中学受験ブーム以前も大きなブームがありました。それは1990年前後。30年の時を経て、再び大ブームとなったのです。
2020年度の首都圏受験は激戦だったと述べましたが、かつて「中学受験ブーム」と形容された時代がありました。今から約30年前、1990年前後のことです。
「令和の中学受験」から引用
【参考】1990年前後の中学受験ブーム世代は何年生まれ?
- 1989年に小6 1977〜78年生まれ
- 1990年に小6 1978〜79年生まれ
- 1991年に小6 1979〜80年生まれ
- 1992年に小6 1980〜81年生まれ
- 1993年に小6 1981〜82年生まれ
1990年前後、なぜ中学受験が増えたのか?
日本が好景気に沸いた1990年前後。1991年にバブルが崩壊する訳ですが、その少し前に中学受験ブームが起きました。
この時期になぜ、中学受験がブームになったのでしょうか。それは、およそ10年おきに改訂される学習指導要領がきっかけでした。
この時期は、小・中学校の学習指導要領が改訂され、そこに盛り込まれた新学力勧への賛否が渦巻いたり、大学入試センター試験が新規導入されたり、公立中学校でいわゆる「偏差値追放」(偏差値による進路指導や業者テストの禁止など)が起こったりしたときでした。
当時の小学生の保護者たちは、揺れ動く公教育に対して不信感を抱いたのでしょう。その結果として、首都圏において私立中学入試に挑む子どもたちの数が激増したのです。
「令和の中学受験」から引用
【今】2020年前後の中学受験ブームは、なぜ起きたのか?
さて、それでは現代の中学受験ブームについて。
なぜ今、中学受験者数・受験比率が急増しているのでしょうか? ピンと来た方もいるかと思いますが、書籍『令和の中学受験』で以下のように解説されていました。
ポイントは3つ。
【1】90年代の中学受験経験者が、小学生の親になった
1990年前後に中学受験をした子どもたちが、2020年前後にアラフォーになりました。つまり、小学校の親世代の年齢になったわけです。
中学受験を経験してきた親が大勢現れ、「わが子にも自分と同じルートを歩ませたい」と考える保護者が増えたのです。
【2】祖父母が孫の教育費を惜しみなく援助
その親世代にかつて中学受験を勧めたのは、今の小学生の祖父母です。
孫に対して中学受験への理解があり、教育費においても惜しみない援助の手を差し伸べる傾向にあるそうです。
【3】税制改正「直系尊属からの教育資金の一括贈与の非課税制度」
2013年度の税制改革において、「直系尊属からの教育資金の一括贈与を受けた場合のみ贈与税の非課税」の制度が創設されました。
わかりやすく言えば、「祖父母から教育費として贈与する場合、1,500万円までは贈与税を非課税にしますね」という制度です。
少子化・高齢化の中、6ポケットで生き残りをかける教育業界
矢野耕平・著『令和の中学受験』は、「親世代の中学受験と今の中学受験は変化していますよ。自分の経験だけで判断せず、最新の知識にアップデートしておきましょう!」 といった趣旨の本です。
新書なのでサクッと読めます。気になる方は、ぜひ。(2は未読です)
中学受験ブームは、教育業界(民間)が仕掛けたビジネス
最後に僕が感じたことを少々。
1990年前後は、第二次ベビーブームの子ども達が受験生になった時代です。とにかく子どもの数が多く、教育業界は潤っていたかと思います。
一方、今は子どもの数が激減。教育業界で活動する民間企業等は存亡をかけた戦いを繰り広げています。
出生数の推移
- 1973年 約209万人
- 1980年 約158万人
- 2010年 約107万人
- 2022年 約78万人
そんな大ピンチとも言える状況で、いわゆる6ポケットに狙いを定めた教育業界(進学塾や私立中学校など)はさすがだな、という印象です。
6ポケットとは、子ども一人に対して、両親と両祖父母の最大合計6人の財布があることを指したマーケティング用語。政府が教育費の贈与税を非課税(1,500万円まで)にしたのも、教育業界から政府への働きかけもあったのではないでしょうか。
また、SAPIXは代々木ゼミナールの関連会社である株式会社日本入試センターが経営し、四谷大塚は東進ハイスクールを運営する株式会社ナガセの傘下です。予備校生が減る中、小学生の顧客を増やそうとした戦略もすごいですね。
今の中学受験ブームは、企業のマーケティングがなした成果と言えます。つまり利益を追求するビジネス。
ますます進む少子化が進む時代において、中学受験は加熱の一途を辿るのでしょうか。また、各家庭ごとの経済力による教育格差はどんどん開いていくのでしょうか。
海外から「日本の教育は素晴らしい」と評価され、日本に留学生が次々に入ってくるようになれば状況はまた違ってくるのでしょうが、教育業界が内需に頼っているあいだは「中学受験ブームをもっともっと加熱させよう」という力が働いてくるかもしれませんね。
進学塾などのプロモーションは、子どもの幸せを願う親心や、周囲の保護者に負けたくないという親のエゴに、すっと入ってきます。一方の公立中学校には広告宣伝費はありません。広告や空気に翻弄されすぎないよう注意しておきたいものです。
息子が小3になり、中学受験について周囲のざわつきがグッと高まりました。とはいえ僕自身は……
✔︎ 勉強って結構楽しいな
✔︎ 友達と遊ぶの大好き
✔︎ 世界って広いんだなと、心を動かされる日々を重ねてくれたらいいなと思っています。親がさせるのではなく、子自身が気づいてくれたら😌
— パパやる (@papayaru) November 12, 2023
✔︎ 学ぶ楽しさを知っている
✔︎ 交流が好き
✔︎ 好奇心旺盛、世界に関心これは大人になっても大切な素養。一生使えます! 自分で行動を起こしたり、自分自身の幸せを見つけられるようになるはず。きっとね。
— パパやる (@papayaru) November 12, 2023