嫁さんが陣痛に耐え、必死で出産をしたとき、「よくやった! 本当に大変だったね。ご苦労さま」と感激しました。そして産声を上げるわが子を見て、「もうこれだけで十分。元気なだけでありがたいよ。これ以上は望みません」と、素直に感じました。
わが子は高齢出産で授かったので(夫40歳・妻37歳)、「妊娠・出産というのは奇跡だね」「息子が居てくれるだけで幸せだね」と、夫婦でもそんな会話をよくしていたのです。
それから4年……。
なぜか、つまらないことで夫婦で意見の食い違いが起きるようになりました。保育園から帰ってからの子どもの過ごさせ方、週末の習いごと、住まいのこと、など。
僕は、呑気な性格ですので、「こたろう(息子)は日中、保育園で疲れているだろうし、夜はゴロゴロ過ごしてもいいんじゃない?」と思う反面、嫁さんは「読み書きは早く覚えさせたい」と考えて、夕食後に4歳児向けのドリルを母と子で取り組んでいます。
また、息子は今、スイミングスクールで水泳を習っているのですが、これは夫婦一致で通わせています。しかし、嫁さんは「もうひとつ英語か何かを習わせたい」と考えていて、僕は「4歳なので1つで十分。2つは忙しすぎる」と思っています。
住まいに関しては、僕は「狭い方が必要なものしか置けないのがシンプルで良いし、家賃も安い」と考え、嫁さんは……。
とにかくこうした話を夕食の場などですると、意見が毎回食い違うため会話がスムーズにならず、4歳の息子から「パパとママ、ケンカしない!」と叱られています。
あれ? 子どもは元気なだけで十分だと思っていたのに、いつのまにか「こうあって欲しい」と、理想を掲げるようになっていました。
アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本
みなさんには、そんな悩みはありませんか?
大きな悩みではないけど、夫婦で意見が食い違う。このままだとモヤモヤが続いてしまうから、放置するのは気になる。でも一体どうすれば解決できるのだろうか……と。
先日、ハッとさせられる男性向けの育児本と出会いました。
本書の冒頭には、こう書かれています。
“よかれと思って一生懸命がんばっているのにもかかわらず、思いとは裏腹に、なぜか子どもとよい関係を築けていないと感じたり、愛しているはずのヨメとの関係が徐々に悪化していると感じたりしているパパのための本です。”
これはまさに、僕(僕たち)のための本じゃないですか!
本のタイトルにあるよう、アドラー心理学を父親の育児に取り入れた内容となっています。僕は、この本を読み漁り、悩みを解決するためのヒントを得ることができました。
【1】それって相手の問題? 課題を分離してみる
アドラー心理学では、悩みを考える際、「課題を分離する」と説いています。
本書に出てくる事例のひとつですが、「年齢の割に幼すぎるわが子(小3)は、この先いじめの対象になるのではないか」と、心配している両親がいます。
これは誰の課題か?
心配しているのは両親なので、父親と母親の課題になります。ですので、これを子どものせいにして、
「そんな風だと、いじめられちゃうよ!」
と、親の心配事の解決を子どもに迫るのは正しい対処法でない、ということです。
まずは夫婦でしっかりと話し合って、お互いが感じている不安を共有します。「この心配事は、自分たちの課題だね」と理解した上で、その気持ちを子どもに押し付けないように考えるのが良い、と言うわけです。
子どもの課題に対して、「あなたのためだから」と価値観を押し付けると、子どもは「ありのままの自分ではダメなんだ……」と勇気をくじかれて、自立よりも依存を選ぶようになってしまいます。
そうではなく、その子らしさを認めて、信頼して、見守ることで、輝きながら伸びて行くのです。
これは親子関係に限らず、夫婦関係、友人関係、職場の人間関係などでも同じだと言えそうですね。自分が悩みを抱えたときは、まず「課題の分離」を考えてみると良さそうです。
【2】その悩みごと、あなたの性格が生み出していない?
人の性格は、生まれてからいくつかの段階を経て、10歳頃に決まるそうです。
- 授乳を通じて「この人、この世界は、信頼できるか」を学ぶ
- いろんな経験を通じて「自分はありのままで良いのか」の証拠を集める
- 学校など社会へ出て、世界が広がり、10歳くらいで性格が確立する
えっ、性格って10歳で決まるの!?
これは発達心理学に基づく考えです。
アドラー心理学では、《人の性格》のことを「ライフスタイル」と呼んでいます。
ライフスタイルには様々な種類があり、他者は自分に奉仕して当然と考える欲張りタイプの「ゲッター」、他人の顔色をうかがい好かれようとする「ベイビー」、他人に任せることができずに自分で努力する「ドライバー」などがあります。
これらは、10歳までの育った環境が大きく影響します。親の過保護が常態化していたり、かわいらしさや弱さを見せた方が上手く行った経験を多くしていたり、兄弟間の競争でいつも勝つ経験をしていたり、など。
ここで大切なアドラーの教えは、自分のライフスタイルが悩みごとを作り出している、ということです。
たとえば、「競争には必ず勝つべし!」と考えて必死に努力をするドライバーが、「可愛らしくして、上手く好かれよう」とするベイビーに対してイライラしてしまう、といった具合です。
ライフスタイルは、その人の個性です。
夫婦ゲンカが起きたとき、そのイライラは相手のせいではなく、あなた自身が生み出しているかもしれないのです。
相手を責める前に、自分のライフスタイルが相手と不一致で、それがイライラを生み出す原因になっていないかを、考えてみると良さそうです。
【3】共同体感覚を持って、自分も家族も幸せに
アドラーは、子育ての目的を「共同体感覚を育成する」と表現しているそうです。
アドラーがいう共同体感覚とは、自分自身の笑顔が起点で、そこから周囲に笑顔が拡散されていくイメージです。夫も妻も、自分の幸せを追求しつつ、その幸せを家族にも広げて行くのです。
本書ではわかりやすい例として、スポーツ選手の話が書かれています。
そのスポーツ選手は、最初は自分の幸せのためにスポーツに打ち込み、試合にも出ていました。しかし、強豪や怪我などの壁にぶつかり、心に変化が起きます。最初は自分のために頑張っていたのが、次第に、応援してくれている人や、家族やコーチのために頑張ろうと思えるようになったのです。
するとその先に、優勝や金メダルがあったのです。
こうした感覚を共同体感覚と言います。この共同体感覚を持って、パートナーや子どもと向き合っていたら、結果的に自分も家族も幸せになれるのではないでしょうか。
アドラー心理学は、実践の心理学
本書「アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本」には、8人の悩みを持ったパパが登場します。そんなパパの悩みを通じて、アドラー心理学が学べるようになっています。
- 子どもが言うことを聞かないと、つい感情的に怒ってしまう
- 子どもについついモノを買い与えてしまう
- 子どもが幼く見えて、いじめられたりしないか、将来が不安になる
- 年頃の娘とスキンシップをとりたいが、嫌がられる
- 子どもが保育園で「発達障害のグレーゾー」とされ、夫婦関係もギクシャクしている
- 子どもの受験を控え、心配しているが、家族になかなか話ができない
- 妻とのけんかが絶えず、離婚をほのめかされた
- 子どもが生まれて数年たったが、セックスレスを解消できない
ただし、本書を読んだだけで、家族が笑顔になる訳ではありません。なぜなら、アドラー心理学は「実践の心理学」と言われているからです。
本書の著者、熊野英一さんは、「まるで、おけいこ事のように、日々の実践を通して、少しずつコミュニケーションを上達させて行く」と言います。
アドラー心理学のエッセンスを学び、それを毎日実践しながら、自分自身が幸せになり、さらに家族も笑顔にして行こうという訳です。
がんばります!
とても勇気がもらえる本でした。
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