トイレにまつわるウイルス感染のはなし。公衆トイレのシャワートイレはこんなに危険!

北野
ウイルス性の病気は、ウォシュレットなどシャワートイレでも感染する恐れがあるのをご存知ですか? なぜなら便の中にもウイルスが含まれているからです。

大事な話なので、本記事にて詳しく解説します!

先日、1歳7ヶ月の息子に下痢と熱が1週間ほど続き、なかなか大変でした。診察を受けた小児科によると「保育園内でウイルス性の胃腸炎が流行し、それが感染したのだろう」と言うことです。

病院では、はじめての血液検査をしました。指先を針でチクっと刺して、そこから出てくる血液をストローのようなもので採取。じわじわと出てくる血液を1分間くらいかけて指先から搾り出していたので、ちょっとかわいそうでした。

血液検査の目的は、「細菌感染か? ウイルス感染か?」を調べるため。結果は、ウイルス感染でした。細菌の場合は抗生物質で退治することができますが、ウイルスの場合は免疫力でやっつけるしかない、とのこと。

ということで、息子には整腸剤(ビオフェルミン)が処方され、ゆるゆると1週間ほどかけて自然治癒を待ちました。

ウイルス感染、怖いですよ! うちの嫁さんも感染したのか、軽症でしたが微熱と下痢が発症し、2〜3日続きました。

ウォシュレットでウイルス感染する

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さて、本題です。今回、ウイルスについて勉強しようと、こんな本を読みました。サクサクっと読めて、とてもわかりやすい良い本です。

本書の中で、特に気になった「トイレの話」をご紹介します。

そもそもウイルスは、咳やくしゃみで飛散し、それを他の人が吸い込むことで感染します(飛沫感染)。子どもの場合は食べ物や箸などの食器を介することもありそうですね。他にも、ウイルスが手に付着した状態で、あちこち触り、その物質を経由して他人に感染することもあります。

そんな、人から人へと感染するウイルスですが、シャワートイレ(ウォシュレットなど)で感染することもあるそうです。

公衆トイレのシャワートイレは使わない方がいい

シャワートイレを使っている方、水圧はどれくらいに設定していますか? 優しく使いたいので「弱」、きつく当たらないと洗った気がしないので「強」。人それぞれ、好みがあるかと思います。

しかし、ウイルスという観点から見た場合、「強」の人は大迷惑!

なぜなら、強い勢いでシャワーを当てることによって、便の中にあるウイルスが飛び散り、便器やシャワーノズルに付着します。ひどい場合は、ノズルに便そのものが付着する可能性もあります。ノズル洗浄機能もありますが、基本的にはウイルスまで殺菌してくれません(除菌機能が搭載されたモデルもあり:参考「きれい除菌水」)。

次の人が使ったとき、シャワーや便器を通じて、ウイルスが感染してしまうのです。

ゾッとしますよね……。

自宅でも注意は必要ですが、公衆トイレは不特定多数が利用するので、ウイルス感染者が「強」でシャワーを使う可能性があります。ですので、公衆トイレでのシャワーは、使わない方が良さそうです。

病院では、入院患者に温水便座(シャワートイレ・ウォシュレット)の使用を禁止

入院中の患者さん

さらにネット検索でも調べてみると、女医さんの以下のブログ記事を見つけました。病院内でのシャワートイレについての話です。

 


入院患者さんにも温水便座の使用を禁止し、傷口を洗いたい場合には一人一つずつ個人専用の携帯用おしり洗浄器をお渡しするようにしたんです。

そしてうちの診療所内のウォシュレットは次亜塩素酸ナトリウムで殺菌してます。

ノロウイルス対策で始めたことなのですが、季節を問わず、便器や温水便座の清掃には次亜塩素酸ナトリウムを使用しています。

でもね・・・

一人が使用する度に次亜塩素酸ナトリウムで清掃・殺菌しないと本当の意味で感染を防止することは出来ないんですよ。

病院のウォシュレットは安全か?:みのり先生の診察室 より一部引用


 

やはり病院では、シャワートイレが院内感染の経路となる恐れがあるとして、対策がとられていたようです。これは一例ですので、すべての病院が同じとは限りませんが……。

参考 ジアン塩素ナトリウムとは

次亜塩素酸ナトリウムとは「次亜塩素酸ナトリウム」は、アルカリ性で、酸化作用を持ちつつ、原液で長期保存ができるようになっています。ハイターなどの塩素系漂白剤が代表例です。
厚生労働省より

トイレでウンチをした場合、通常、ウイルスはどこに付着するのか?

再び、本「洗浄と殺菌のはなし」の話題に戻ります。

本書には「トイレ後のウイルス感染」という項目があります。そこで、「トイレで大便をした場合、どのようにしてウイルスが付着するのか?」について書かれていました。

  1. お尻を紙で拭く(手に細菌やウイルスが付着する可能性大)
    シャワートイレのあとのティッシュも同じ(濡れたトイレットペーパーの場合、ノロウイルスだと30枚くらいは通過できる
  2. その手で、ズボンをあげる
    ファスナー、ベルトにウイルスが付着する
  3. その手で、トイレの個室のドアを開ける
    ノブや鍵にウイルスが付着
  4. 手洗い場で、手でひねる蛇口の場合は、蛇口にウイルスが付着
  5. 石鹸が入った容器にもウイルスが付着

こんなにも広がってしまうそうです! またも背筋がゾゾっと……。

そのため近年は、排便後、個室内で手洗いができるような設備にすべきではないか、と議論されているそうです。

北野
ノロウイルス、ティッシュペーパー30枚通過するって、怖ろしいですね……

 

インフルエンザやノロウイルスなど流行時は、他人に移さないようマメな消毒を!

「ウイルスは他人に感染させてしまう」ということを日頃からしっかりと意識して、自分自身が感染拡大しないよう注意すべきですね。

大人の場合、すでに免疫ができていて、ウイルスに感染しても発病しないこともあります。自分自身は元気なので気づかないかもしれませんが、実は知らない間にウイルスを広めている可能性があるのです。

あまり過敏になりすぎるのも疲れてしまいそうですが、インフルエンザなどウイルス性の感染症が流行しているときは、特に気をつけましょう!

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【追記】温水便座使用と院内感染の関連性について検討した初の報告

2021年7月、東京医科大学病院より温水便座による院内感染があると学会で報告しました。

 


温水便座を介して多剤耐性緑膿菌(MDRP)を伝播させるリスクがあると、東京医科大学病院感染制御部・感染症科准教授の中村造氏が第31回欧州臨床微生物学会議(ECCMID 2021、ウェブ開催7月9~12日)で報告。ECCMIDはリリースを発表し、英国のTimes、Daily Mailなどでも報じられた。

(中略)

MDRPはイミペネム、メロペネム、アミカシン、シプロフロキサシンなど、少なくとも2種類の抗菌薬に耐性を示す株と定義した。

解析の結果、患者検体と温水便座ノズルの検体で株が一致し、全ての検体で緑膿菌ST235クローンが優勢であった。そのため、温水便座の使用を介して菌の移行が生じた可能性が示唆された。

温水便座が院内で多剤耐性菌を拡散か:時事メディカルより引用


 

同記事内では、「今回の発表は、温水便座使用と院内感染の関連性について検討した初の報告であり、今後の感染制御策に大きな影響を及ぼすと考えられる」と書かれています。

また、対策として「手指衛生や清掃・環境整備といった感染症対策が十分に行われていれば、患者の免疫系が低下した場合も感染拡大を抑制できる」とありました。

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