あなたの奥さんがはじめての赤ちゃんを出産し、新米パパのスタートを切ることとなった男性におすすめの書籍を、2冊紹介しています。
前回の「新しいパパの教科書」に次いで、今回は「産後クライシス」です。
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産後クライシス。NHK「あさイチ」が最初に使った言葉。
最近、あちこちで良く耳にする「産後クライシス」という言葉。この言葉を最初に使ったのは、2012年9月5日放送のNHK「あさイチ」なのだそうです。
愛し合う夫婦のあいだに授かった可愛い赤ちゃん。人生最高の幸せや愛情をイメージしていたのに、出産・育児を切っ掛けに夫婦間に亀裂が入り、離婚の危機に至る場合もある。
なぜなのか?
調査によると、妊娠した段階では7割の夫と妻が相手に愛情を抱いているのに対し、赤ちゃんが誕生した途端にパートナーへの愛情が急速に下がり、子どもが2歳になる頃にはパートナーを愛している夫は約半数に、妻は3割に激減することがわかったんだそうです。
実際、『母子家庭になる時期』で最も多いのが、子どもが0歳〜2歳の時期で、全母子家庭のほぼ3割を占める。子どもが2歳になる前に離婚をしているということです。
参照元:第1回 妊娠出産子育て基本調査・フォローアップ調査(妊娠期~2歳児期)速報版:ベネッセ教育総合研究所
この夫婦間の危機を番組で特集するにあたり、どういう言葉で表現するかというところで、「産後クライシス」という言葉が誕生したとの事です。
ちなみに本書「産後クライシス」は、NHKの記者(1児の母)とディレクター(2児の父)の共著です。男性視点、女性視点、両方からの考えがしっかりと盛り込まれた内容になっています。産後クライシスは、男女のズレが問題なので、男女の共著というのは重要ポイントです。
内田 明香(うちだ あすか)さん
- NHK報道局記者
- 1971年生まれ
- 1児の母
- 産後クライシス経験あり
坪井 健人(つぼい けんと)さん
- NHK制作局ディレクター
- 1980年生まれ
- 2児の父
- 産後クライシス経験あり
産後クライシスは昔からあった。何故、今になって問題に?
昔と今とでは、夫婦観や家族観に変化が起きていて、それが原因で近年産後クライシス状態が問題視されている、とのこと。
昔の考え方
- 愛情なくなっても、そんなもんだと考えていた。
- そんなことで離婚はしなかった。
- 男性は妻の愛情を失うことに重きを置いていなかった。
今の考え方
- 愛していないのに、夫婦でいる必要がある?
- → 離婚の危機!(背景に女性の自立)
男性と女性の残念すぎる、すれ違い。
本書にある夫婦の実例が紹介されていました。かいつまんでご紹介します。
はじめての子どもを授かったある夫婦の話です。
妊娠中、夫は胎教CDを買ってきたり、お腹の赤ちゃんに語りかけたり、産まれる前からメロメロ。「きっといいパパになるわ」と、妻の期待は高まりました。しかし、赤ちゃんが生まれた途端、手のひらを返したように無関心に。
ある夜、夜泣きがひどい日に珍しく夫が目を覚ましたので「寝かしつけしてくれるかな?」とお願いしたら、「俺、明日早いんだけど」と、背を向けてひとこと。
はじめての育児に奮闘する妻にとっては、辛い言葉でした。
さらに別の日、酔っぱらって帰ってきた夫が「ホントはな、こんな子どもが泣いてばかりのしけた家なんかに帰ってきたくないんだよ」と、妻に口走ったんだそうです。
こういった事の繰り返しに、妻の夫への愛情は次第に冷めて行きました。
しかし夫はふたり目を望んでいたので、「下の子が出来れば、夫は変わるのではないか」と、妻は期待してふたり目に挑みました。
妊娠し、おなかが大きくなった頃、夫は「1週間の育休を取る」と言ってくれたんだそうです。ところが、育児休暇期間中、夫は趣味のラジコンショップ通いをし、出産で入院している妻に、ラジコンの走りを携帯で撮影して送って来たんだそうです。
- 【妻】上の子の面倒も見ずに、好きなことをしているだけじゃない!(怒)
- 【夫】新しいラジコンを楽しんでいるメールを送るなんて、妻を愛している証拠だよ。(愛)
これって、女性視点から見れば「妻をないがしろにする悪意いっぱいの夫」ですが、男性視点から見れば「まぁわからなくもない。可愛い旦那さんじゃないか」とも思えてしまう。
こういった夫の些細な行動や発言が、妻の愛情急落の切っ掛けになっているんじゃないか、ということです。もちろん、妻が夫を理解する気持ちも不足している、という部分もあります。
産後クライシスがある事を、知っておく事が大切。
本書は、産後クライシスが起きるメカニズムや回避方法などについて、様々なデータや調査を元に深く書かれています。
この本書を通じ、「子どもを授かる夫婦には、産後クライシスも一緒にやってくる」ということを《知っておく》が重要です。知っておく事で、パートナーの気持ちに気づく事が出来たり、おおらかな気持ちになって無用なケンカやイライラを未然に防ぐことも出来るでしょう。
もし知らなければ、妻は「こんな優しさの足りない夫だとは思ってもなかった!」、夫は「妻は何をカリカリしているんだ」と、お互い不満を募らせてゆくばかりになってしまうかも知れません。
また、本書は「産後クライシス」が夫婦間の私的な問題だけではなく、社会全体として考えるべき問題としています。ご夫婦に限らず、社会人や、育児を終えたご年配、これから結婚を迎える若者達にも読んでもらいたい本です。ポケットサイズの新書です。気軽に読めるので、ぜひ手に取ってみてください。