厚生労働省が、およそ10年ぶりに「健康づくりのための睡眠指針」を策定しました。
睡眠指針の経緯
- 平成15年(2003年)「健康づくりのための睡眠指針 快適な睡眠のための7箇条」
- 平成26年(2014年)「健康づくりのための睡眠指針 2014」
- 令和5年(2023年)「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」
今回の主な変更点は、以下のとおりです。睡眠に関する新たな科学的知見が蓄積され、内容が刷新されました。
最新版の変更点
- 「成人」「こども」「高齢者」と年代別にとりまとめた
- 良い睡眠には、光・温度・音等の環境因子、食生活・運動等の生活習慣、睡眠に影響を与える嗜好品との付き合い方も重要であるため、科学的知見を踏まえ、とりまとめた
- 睡眠時間は◯時間以上など定量的な推奨事項だけでなく、良質な睡眠確保に向けた睡眠環境や生活習慣等の見直し
- 「指針」という表現が全ての国民が等しく取り組むべき事項であるという誤解を与える可能性等を考慮し、「ガイド」という名称に変更
厚生労働省が公表した資料は全50ページに及ぶのですが、ここでは特に子どもの睡眠について主要なポイントをお伝えします。
世代別 推奨睡眠時間
まずは、全体の世代別推奨睡眠時間を見ていきましょう。
1〜2歳の推奨睡眠時間 11〜14時間
- 1歳から2歳は、11〜14時間を参考に睡眠時間を確保する。
3〜5歳の推奨睡眠時間 10〜13時間
- 3歳から5歳は、10〜13時間を参考に睡眠時間を確保する。
小学生の推奨睡眠時間 9〜12時間
- 小学生は9~12時間を参考に睡眠時間を確保する。
- 朝は太陽の光を浴びて、朝食をしっかり摂り、日中は運動をして、夜ふかしの習慣化を避ける。
中学生・高校生の推奨睡眠時間 8〜10時間
- 中学・高校生は8~10時間を参考に睡眠時間を確保する。
- 朝は太陽の光を浴びて、朝食をしっかり摂り、日中は運動をして、夜ふかしの習慣化を避ける。
成人の推奨睡眠時間 6時間以上
- 適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する。
- 食生活や運動等の生活習慣、寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休養感を高める。
- 睡眠の不調・睡眠休養感の低下がある場合は、生活習慣等の改善を図ることが重要であるが、病気が潜んでいる可能性にも留意する。
高齢者の推奨睡眠時間 8時間以内
- 長い床上時間が健康リスクとなるため、床上時間が8時間以上にならないことを目安に、必要な睡眠時間を確保する。
- 食生活や運動等の生活習慣や寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休養感を高める。
- 長い昼寝は夜間の良眠を妨げるため、日中は長時間の昼寝は避け、活動的に過ごす。
子どもが睡眠不足だと、どんなリスクがあるのか?
推奨睡眠時間が「小学生 9~12時間」「中学・高校生 8~10時間」というのは、思ったより長いと感じた方が多いのではないでしょうか。
子どもは放っておくと何時間でも寝られるのではないか、と思えるほどよく寝ます。しかし、最近の子どもは習い事や塾通いで忙しかったり、ゲームやYouTubeなどの娯楽が豊富で夜ふかししがちだったりで、これだけの睡眠時間を確保するのはなかなか難しいです。
小学生が朝7時に起きる場合、12時間前だと夜7時ですからね。
だからといって、睡眠不足を習慣化するのは良くありません。厚生労働省の睡眠ガイドによると、「睡眠の機能と睡眠不足による健康リスク」として以下を伝えています。
子どもの睡眠不足が招くリスク
- 肥満のリスクが高くなる
- 抑うつ傾向が強くなる
- 学業成績が低下する
- 幸福感や生活の質(QOL)が低下する
夜ふかし・朝寝坊対策 4つのポイント
睡眠時間を確保するためには、夜ふかしをしないのが肝心です。厚生労働省では、子どもが夜ふかしをいしないようにするための、ポイントを4つ案内しています。
引用しながらご紹介します。
(1)起床時の日光浴
乳幼児期は、朝起きる時間を決め、カーテンを開けて部屋を明るくしましょう。朝食後は戸外に出て活動しましょう。小学生以降は、登校時や学校で日光を十分に浴びましょう。週末休日も普段と同じ時間に起床して、日光を浴びましょう。
(2)朝食の摂取
朝食を摂らない生活習慣は、朝〜午前中に日光を浴びない生活環境と同様に、睡眠・覚醒リズムの後退を促すことが報告されています。
夜ふかし・朝寝坊になると、朝食の欠食が増えますが、これはさらに夜ふかし・朝寝坊を助長する原因となります。
こどもにおいて、夜ふかし・朝寝坊習慣は慢性的な睡眠不足を伴うことが多く、肥満のリスクともなります。さらに肥満は閉塞性睡眠時無呼吸のリスクとなり、これにより生じる睡眠の質の低下から、朝の目覚めを悪くし、夜ふかし・朝寝坊化をさらに促し、肥満のリスクをさらに高めるといった悪循環が形成されやすくなります。
(3)運動習慣の定着
座りっぱなしの時間、特にスクリーンタイム(テレビ視聴やゲーム・スマホ利用など)が長くなりすぎないようにしましょう。
小・中・高校生は、1日当たり60分以上からだを動かし、スクリーンタイムは2時間以下にすることが推奨されています。
長時間の座位行動(及びスクリーンタイム)は肥満の増加や睡眠時間の減少と関連し、逆に、適度な運動は、良い眠りにつながります。運動は1日の中でどの時間に行っても睡眠の質を改善しますが、就寝前1時間以内の激しい運動はかえって睡眠の質を低下させる可能性がありますので、寝る直前の運動は控えたほうが良い でしょう。
(4)デジタル機器使用の回避
デジタル機器は寝室には持ち込まず、電源を切って、 別の部屋に置いておきましょう。特に、寝そべりながらデジタル機器を使うと、ディスプレイの視聴距離が近くブルーライトを浴びやすくなるため、寝つきや睡眠の質の悪化につながります。
高校生はでは成長期、大人より長い睡眠時間が必要
そもそも、なぜ子どもは長時間寝ないといけないのか?
それは高校生までは成長期だからです。
「成長・加齢とともに必要な睡眠時間は減少していきますが、成長期である高校生までは成人よりも長い睡眠時間を必要とすることがわかっている」と、厚生労働省では説明しています。
つまり、毎日十分な睡眠時間を確保するためには、成人よりも規則正しい生活習慣を保つことがより重要なのです。
子どもは何時に寝ないといけないの?
子どもにとって、睡眠時間の確保はとても大切なことがわかったかと思います。
乳幼児期は、こどもの睡眠習慣が親の睡眠習慣に影響されやすいため、家族ぐるみで早寝・早起き習慣を目指すと良いとしています。また、小学生以降は、前述の推奨睡眠時間から逆算して夜寝る時間を決めるのが良いとのこと。
小学生の就寝時間は、夜7時〜10時
小学生の推奨睡眠時間は「9~12時間」です。
通学時間15分以内の小学校に通っていて、朝7時頃の起床とします。その場合の就寝時間は以下のようになります。
小学生の就寝時間
- 夜7時就寝 12時間
- 夜8時就寝 11時間
- 夜9時就寝 10時間
- 夜10時就寝 9時間
中学生・高校生の就寝時間は、夜9時半〜11時半の間に寝よう
中学生・高校生の推奨睡眠時間は「8~10時間」です。
通学時間30分以内の中学校・高校に通っていて、朝6時半時頃の起床とします。その場合の就寝時間は以下のようになります。
中学生・高校生の就寝時間
- 夜9時半就寝 11時間
- 夜10時半就寝 10時間
- 夜11時半就寝 9時間
今回は以上です。厚生労働省の睡眠ガイドは、大人・高齢者向けの案内もありますので、ぜひご覧くださいね!