すこし前、うちの近所の公園で性的な犯罪「公然わいせつ」がおきました。茂みから男が現れ、小学生に対し、下半身を露出したり卑猥な言葉を投げかけたりしたのです。
公園には、子ども達がたくさんいるし、付き添っている保護者もいる。しかも時間は真昼間。
「一体、なぜこんな場所で!?」
話を聞いた僕は驚いたのですが、そこは公園の端っこで人通りが少なく、保護者がたむろしている位置からは見えづらく死角になっていました。
つまり犯人は、「この場所に子どもが来たらやってやろう」と待ち構えていたのです。
気持ち悪いし、怖すぎる……。
NHK視点・論点、小宮信夫「子どもの安全をどう守るか」
NHKのニュース解説番組「視点・論点」で、子どもの安全についての放送がありました。同じ内容が。NHKのウェブサイト「解説委員室」にも掲載されています。
これが素晴らしい内容でした!
子ども達の安全を守るための方法として、とても役に立つことが伝えられています。小学生の親を持つ父親として、番組の内容を僕の意見を交えながらご紹介します。
参考リンク
立正大学教授・小宮信夫氏 著書
「不審者に気をつけて」「いかのおすし」では不十分
わが家の息子は小学2年生。
小学校に入学した1年生の頃より、学校から「いかのおすし」を何度も繰り返し教えられています。警察でも「いかのおすし」を、子どもの防犯に活用しています。
いかのおすし
- 【いか】ついていかない
- 【の】車にのらない
- 【お】大声をだす
- 【す】すぐ逃げる
- 【し】大人の人に知らせる
うちの息子もバッチリ身についています。息子の同級生のあいだでも、僕に対して「あっ、不審者だ!」など冗談を言って遊ぶほど。危険な人に常に注意を払っているわけです。
子どもの防犯、日本と海外の違い
ところで、これって対象は「人」ですよね。危ない人がいたら気をつけましょう、ということです。
立正大学教授・小宮信夫さんは、こうおっしゃっています。
海外では「危ない人」ではなく、「危ない場所」に注目しています。「危ない場所」なら、見ただけで分かるからです。(記事より引用)
たとえば、子どもの誘拐。あなたは、どちらの割合が高いと思いますか?
- 連れ去り
- 騙す
正解は2。子どもの誘拐事件の8割が「騙す」なのです。
誘拐といえば、怪しい人がパッと現れて、車に押し込んで連れ去るイメージがあります。でも、ほとんどが子どもに嘘をついて、子どもが騙されてついていってしまうのです。
誘拐以外でも、このような性犯罪もありました。
女の子を団地の階段に連れ込む事件がありました。犯人は、「虫歯を見てあげるよ」と言って、女の子の口を開けさせ、性犯罪をしていました。
犠牲になった子どもは、50人に及びました。なぜそれまで発覚しなかったのでしょうか。それは、被害に遭った子どもが、犯人のことを「虫歯を治してくれた親切な人」と思っていたからです。そのため、親に言わなかったのでしょう。(記事より引用)
つまり、人は見た目でわからない。
しかも、嘘をつかれても犯罪者・不審者だと気づかない。
子どもに「危ない人かどうか、自分で判断してね」と言っても難しいのです。
危ない場所に近づなかい!
「犯罪をたくらんでいる者に、実行する機会を与えない」
こうした考えを犯罪機会論というそうです。
本記事冒頭で、死角の茂みで隠れていた性犯罪者のエピソードを紹介しましたが、もしここに子どもが来なかったらどうでしょう。
犯行が行われれずに、諦めて帰ったかもしれませんね。
日本では、不審者に注目し、「防犯ブザーを鳴らそう」など対処法を教えています(子どもが一人で犯人と対決するマンツーマン・ディフェンス)。
一方で海外では、場所に注目し、犯罪の機会を失わせる発想です(「襲われないためにはどうすべきか?」と考えるゾーン・ディフェンス)。
視点とアプローチが違いますね。
危険! 見えにくい場所、落書き・ゴミが多い場所
でも、暗くて寂しい夜道なら「危ない場所だ」と思えますが、日中の公園・路上で「どこが危険な場所か?」は、わかりづらいですよね。小宮信夫さんは以下のように解説しています。
【危険1】入りやすくて、見えにくい場所
犯罪が起きやすいのは「入りやすくて見えにくい場所」であることがわかっているそうです。
たとえば、公園は入りやすく、怪しまれずに子どもに近づくことができますよね。
また、見えにくい場所は、高い塀が続いていたり、茂みがあったりするような場所です。ただし、周囲が田んぼで見通しの良い場所であっても、近くに家がないと誰も見ていないので、結局見えにくい場所になるとのこと。
入りやすい場所・見えにくい場所については、NHKの別の記事にも書かれているのであわせてごらんください(参考リンク:まいにちスクスク 子どもの防犯(1)子どもにとって危険な場所)
【危険2】落書き・ゴミが多い場所
犯罪者の心理として、落書きやゴミが多い場所は「ここはいけるな」と思うそうです。
犯罪者はそうした景色を見ると、「地域に無関心な人が多いな。犯罪を目撃されても、見て見ぬ振りをしてもらえそうだ」と考えます。つまり落書きやゴミは、犯罪者の警戒心を解き、犯罪を誘発してしまうのです。(記事より引用)
以上、NHKで解説されていた「子どもの安全をどう守るか」の紹介です。
小宮信夫さんは犯罪学者。著書も多数出ているので、もっと詳しく学びたい方は、これらもどうぞ。
子どもと「危ない場所」について話し合おう!
日本式の危ない人に気をつける「いかのおすし」も大事だと思います。それに加えて、今回ご紹介した「危ない場所」についても、お子さんに伝えましょう。
もちろん、お子さん任せにはできないので、いつもの公園やお出かけした先々で「危険な場所はどこかな?」「悪い奴はどこで犯罪をするかな?」など、親子で会話をするといいでしょう。
記事冒頭でお伝えした、わが家の近所の公園。言われてみれば、確かに「入りやすくて、見えにくい場所」なのです。でも、初めて聞いた時は「えぇっ、こんな場所で!?」と驚きました。
犯罪者の気持ちになるのは妙ではありますが、犯罪をしようとする者ならどこで待ち伏せ・実行するかを想像してみることも必要です。