わが子を授かって、あと2週間で1年になります。
0歳児の息子は、ただただ可愛く、何をしていても可愛く、夫婦なりに愛情を意識しながら育児に取り組んでいます。「まずは愛情があれば、あとはどうにでもなるよね」と、よく夫婦でも話しています。ですが1歳児になれば、ボチボチとしつけを意識してゆかないといけないんでしょうね。
最近、親としても「父親の役割とは」を考えるようになってきました。ただただ優しいだけが子育てではないだろうし、父親として出来ることは何があるんだろうか? ……と。
精神科医の樺沢紫苑(かばさわしおん)が、映画で語る現代心理分析。
精神科医の樺沢さん、大学生の頃は年間150〜200本を映画館でみるほどの超映画好き。医師になってからも、年間100本は映画をみているそうです。
また、樺沢さんは、医師でありながらもライターでもあるという特異性も持っています。著書は「SNSの超プロが教える ソーシャルメディア文章術」「脳内物質仕事術」「スター・ウォーズ「新三部作」完全解読本」など多数。
精神科医であり、映画マニアであり、文章で人に伝えるのが得意。
実をいうと、僕は樺沢紫苑さんのことも、この本(父親はどこへ消えたか)のことも、まったく知りませんでした。Amazonで他の買い物をしている際に「あなたへのおすすめ商品」として表示されたので、クリックするとすごく面白そうな方だなと興味が湧いたので、思わずポチッと購入してしまった次第です。
こんな本、見たことがない!
樺沢さんは、映画をみるとき、常に「父性」を意識しているんだそうです。たとえば、「ONE PIECE」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」がヒットする以前は、『もう海賊モノは流行らない』というのが映画界の定説だったそうなのですが、これらはなぜ流行ったのか?
そこには「海賊」→「父親」とう連想がある。今は、昔のように父性をもった父親が少なくなり、父親喪失といえる時代になっている。そこに父親の象徴として良いタイミングで海賊モノが現れ、時代のニーズにマッチしたのではないか、と。
本書には、母性は優しさ・癒しなど「包む」役割、父性は厳しさ・規律・鍛錬など「切る」役割があると、書かれています。 母性はわかりやすいのですが、父性はどうもわかりにくい。本書には何度も「父親殺し」という言葉が出てきます。本当に父親を殺すわけではなく、子は父と戦い、心理的に父親を乗り越えないといけない。樺沢さんは、子供が大人へと成長する過程において「父親殺し」が重要な要素である、と説いています。
それを説明するために、事例として「スターウォーズ」「ゲド戦記」「ベオウルフィ」「宇宙戦争」「トロン・レガシー」など、約150作品もの映画をとりだし「父性」「父親喪失」について解説しています。
また、西部劇「シェーン」の当たり前の父性があった時代から、どう変化しながら現代の「父性喪失の時代」に至ったのか、という時代をおった解説もあるのですが、これはとても腑に落ちる部分でありました。
著者が医師ということもあり、説明が論理的でとても丁寧。ふんわりとぼやけた表現はせず、教科書のようにビシッと落ち度なく解説しきっています。そのあたりも、読み進めるにあたって説得力と安心感がありました。
ちなみに、父性とは男性のみ、母性は女性のみが持つものではありません。父親が母性をみせる場合もあるし、女性が父性を発揮する場合もある。現代は、母性の方が多い時代だそうです。
まぁしかし、本書のように「父性視点で映画を解説し、時代を読み解く」、こんな本は初めてみました。なかなか斬新な斬り口で面白かったです。また、出版社は学芸みらい社という聞いたことがない出版社。著者さん、本の内容、出版社と、何もかもが初めてばかりで不思議な感じでした。
映画好きで、育児中の男性には、ぜひおすすめしたい一冊です。
ただ、ひとつ難点をいえば、観ていない映画が話題にあがった際、場合によってはイマイチ理解しづらい部分がありました。僕の場合、日本のアニメ「エヴァンゲリオン」は見たことがないので、文章を読んでもイメージしずらく、その箇所は読み飛ばしてしまいました。 いつかエヴァンゲリオンを見る機会があれば、また本書を手に取って、父性視点で映画を楽しみたいと思います。