どうする、ママ即入院!「経営コンサルタントでワーキングマザーの私がガンにかかったら」レビュー

素晴らしい本に巡り会えました。
子育て中の親が、力強く生きていけるようになれる本です。

育児本ではありません。
親自身ための本です。

この本を読めば子育てをする自身の姿が俯瞰でき、自分のため、家族のために、よりよい選択をし、日々をより充足させることができるようになるでしょう。

山添真喜子・著「経営コンサルタントでワーキングマザーの私がガンにかかったら」

経営コンサルタントでワーキングマザーの私がガンにかかったら
僕がこの本を手に取ったとき、「読者ターゲットを絞り込んでるなぁ」と最初に感じました。

  • 【ビジネス】経営コンサルタント
  • 【子育て】ワーキングマザー
  • 【闘病記】私がガンにかかったら

でも、「はじめに」に目を通したら、そうではないとわかりました。

「あのあくせくした、時間どろぼうに操られているような生活に戻りたい?」

 

自問自答してみる。

 

「これっぽっちも、戻りたくありません」

「あのあくせくした、時間どろぼうに操られているような生活に戻りたい?」 自問自答してみる。 「これっぽっちも、戻りたくありません」
はじめに (P.5)

この変化、どういうこと!?

子育てをされている方は、多かれ少なかれ「あくせくした」毎日を過ごしているかと思います。やることが多いし、自分のペースで物事が進められませんからね。

著者である山添真喜子やまぞえまきこさんは、がむしゃらに仕事と子育てに没頭する日々を送ってこられたワーキングマザー。そんな彼女の意識が、なぜ一変したのか?

《経営コンサルタント》や《ガン》など、テーマは一見重そうに感じます。しかし、読みすめてみると非常に面白いのです。最終章を迎えたとき、「まだ読み終わってほしくない。本書の著者・山添真喜子さんのお話しを、もっと聞きたい!」と思いました。

僕は、ママでもなければ、闘病中でもありません。

同じなのは子育て中ということくらい。それなのに、僕の心にビシバシと突き刺さってきたのです。

この本、僕にとってのポイントはここでした。

仕事と人生にプラスになる闘病記

仕事と人生にプラスになる闘病記

そう、仕事と人生にプラスをもたらしてくれるのです。

ガンで生活が強制終了! ピンチを乗り切る19の方法

著者の山添真喜子さんは、突然ガン告知を受けます。

そのときの状況は、以下のとおり。

  • 【長女】小学5年生(中学受験を控えている)
  • 【次女】小学1年生(小学生になったばかり)
  • 【夫】単身赴任
  • 【妻の仕事】シンクタンクでコンサルタント(主任研究員)
  • 【病気】定期健康診断で急性白血病。即入院(9か月間)

いつもの健康診断で白血病(血液のガン)がみつかりました。医師からは即入院を求められ、無菌室での治療がはじめられることに……。

仕事のピンチ、
子育てのピンチ、
命のピンチ。

それまでのがむしゃら生活が、突然強制終了したのです。

 

本書は闘病記とありますが、時系列に沿って話が進むわけではありません。ガン告知により日常生活が強制終了し、それによって襲いかかってきたピンチをいかに乗り切ったのかのノウハウが全19章で書かれています。

その一例をご紹介します。

  • 誰に、何を、どの順番で伝えるか
  • 子育てをどうるすか
  • 治療方針の二者択一、どちらを決断するか
  • のたうち回る激痛や右手の麻痺、モチベーションをどう保つか
  • 医師や看護師といい関係を築くには

絶望しそうな状況ではあるのですが、山添真喜子さんはくさくさしません。経営コンサルタントとしての知見を活かし、ピンチを課題のように捉えて難局を乗り切っていくのです。

本書でそんな姿をみて、「僕の悩みなんて、とてもちっぽけなものだ。彼女の行動力・判断力は、僕の仕事や子育てに当てはめて役立てることができるぞ!」と、何度も感じ入りました。

妄想メンバーで、最高のチームをつくる

孤軍奮闘(一人でガッツポーズをする男性)
イメージです(孤軍奮闘)

僕は、フリーランサーです。

フリーランスはひとりですので、孤軍奮闘しがちです。

また、育児・子育て中の方も、「私がしっかり頑張らないと」と他からの助けを上手く得ることができず、ただひとりで懸命に努力し続けることがあるでしょう。

闘病中の方も同じです。

山添真喜子さんは、無菌室という完全個室で、ほとんど部屋から出られない入院生活を送りました。まさに孤独です。

このとき、現実的にはひとりで頑張らないといけない状況だったとしても、山添真喜子さんは妄想でチーム結成したのです。

彼女はまず、自分のなかで「白血病細胞撲滅プロジェクト」を立ち上げました。そして本プロジェクトを最後までやり遂げるためのチームを、自分の中で結成するのです。

つまり、妄想で。

プロジェクトメンバー
イメージです(プロジェクトメンバー)

 

妄想メンバー
■コアメンバー

  • 自分自身
  • 主治医

■その他メンバー

  • 看護師さん
  • 薬剤師さん
  • 病棟の補助員さん
  • 理学療法士の先生
  • がん相談支援センターの担当看護師さん
  • 病室の掃除担当者さん
  • 院内美容室の美容師さん
  • 院内レストランのスタッフさん

P.60〜61より引用

山添真喜子さんは、「共通の目的を達成する同士」としてチームメイトを決めました。

決めたあとは、信頼関係の構築です。自分の病歴や体質を積極的に話したり、治療内容や薬についてメモしたりし、《チームビルディングの形成フェーズ》としてのアクションをとったのです。

そうすることにより、本心をぶつけたり、助けを求めたり、感謝の気持ちをより持てたりし、治療へのモチベーションになったということです。

自分の中でプロジェクトを立てて、妄想でチームを結成するやり方は、僕や皆さんの仕事や育児の場面でも大いに活用できるのではないでしょうか。

経営コンサルタントとしては基本的な考え方なのかもしれませんが、僕にとってはとてもハッとさせられました。やってみます!

ビジネスのフレームワークを使って決断する

たくさんのドアの前で悩む女性
イメージです(選べない……)
「何から手をつけたら良いかわからない」
「二者択一、どっちを選べば良いの!?」
「ずっと迷っている……誰か教えて!」

正しい選択をしたいと思っても、迷って決められないことってありますよね。

以下、わが家が直面した悩みです。

  • 【妊活】いつまで不妊治療を続けるべきか
  • 【妊娠・出産】どの病院・クリニックにかかるべきか
  • 【保活】生後何ヶ月から預けるべきか
  • 【育児】断乳はいつするか
  • 【現在】コロナ禍の自粛、どこまで徹底させるべきか

書き出せば、何十、何百とあるでしょう。

そのたび、何となくだったり、周りに流されていたりしたことが多かったように思います。明確に「これだ!」と決断したことの方が圧倒的に少ないです。

 

二軸思考
その2 誰に、何を、どこまで伝えるか? (P.36)

山添真喜子さんは、入院生活や治療において様々な決断に迫られます。そうした場面で、ビジネスで使われるフレームワーク(枠組み)を使って、決断していくのです。

たとえば、即入院が医師から告げられたとき、「誰に、何を、どの順番で伝えないといけないか」の決断に迫られます。このとき《入院によるインパクト》と《実質的なサポート》の「二軸思考」をつかって、その順序を決めました。

また、抗がん剤治療を続けるか骨髄移植をするかの二者択一においても、意思決定のフレームワークに基づき決断します。

「企業経営のノウハウが、闘病においても使えるんだ!」

僕は、驚きました。
僕だったら、主治医の考えを素直に聞きつつも、ネットで調べて悶々としていると思います。

山添真喜子さんは、自分の命や、家族の将来をかけての決断です。

知識として覚えたことを教えてくれるわけではなく、まさに決死の大英断をみせてくれます。

生きたノウハウ、
リアルなサバイバル術が本書に詰まっていたのです。

ピンチに陥ったとき、自分が進むべき道を選び抜く決断力を身につけることができるでしょう。僕も実践してみます!

山添真喜子さんのお話を、もっと聞きたい

本書の魅力はたくさんあります。

僕は、一章、一章、大切に読ませていただきました。

どんなにひどい状況に陥っても、そこから抜け出したり、ポジティブなものに変えてしまうことができるんだな……と。

本書では、自分ごとと重ね合わせながら、勇気を得ることができるでしょう。

この記事の最初の方で書きましたが、「山添真喜子さんのお話をもっと聞きたいな」と思いました。色々なご事情はあるかと思いますが、YouTubeや音声配信で生の声をたくさん聞きいてみたい、と。

より大勢の方の元気の源になるでしょうし、二人の娘さんにとっても将来の手引書になるかもしれませんね(なんだか偉そうにすいません!)。

 

とにかく前向きなパワーがあふれる、素晴らしい本でした。

子育て中の方は、ぜひ読んでみてください。もし、あなたの日常生活が突然強制終了したら、どうしますか……?

著者:山添真喜子
出版社:‎東洋経済新報社

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