わが家のひとり息子は、現在小学5年生(11歳)です。
最近は僕(父)が手をつなごうとすると「やめて!」と速攻で拒否されます。でも、家を出て歩いているとき、ふいに息子が僕の手を取ってくれることがあるんですよね。

このとき僕は、黙ってその瞬間をかみしめています。息子の手の柔らかさ、温かさ、小ささ……。もしそこで「今日は珍しいね」なんて言ってしまったら、恐らくその時だけでなく、今後、二度と手をつないでくれないかもしれません。
「子どもの手を離してはいけない」
そんな幼い頃もありましたが、今となってはどんどん手が離れていっています。子育ての手間がかからなくなることを「手が離れる」と言いますが、リアルに手が離れていってしまうんですね。成長をうれしく思う反面、やっぱり寂しさを覚えてしまいます。
まだまだ可愛らしい息子の手。
手をつないで歩くことができるのは、あと何回残されているのだろうか……。切ない。
70代の母親と手をつないでみた

僕の母親は、僕が小学生の頃にリウマチになりました。
ちょうど今の息子の年齢くらい、小学5〜6年生の頃だったと思います。
母が僕を産んだのは23歳で、30代中頃にリウマチになりました。リウマチとは免疫の異常により全身が痛む病気で、骨や軟骨が破壊され手足の関節に激痛が走ります。それだけでなく手足や関節まで変形し、簡単な日常生活の動作すら厳しくなる恐ろしい病気です。今は医学の進歩で治療法がかなり良くなっているようですが、母の時代は痛み止めが中心の対処療法が基本。何度か手術も繰り返しながら、根治できない不治の病として、発症から40年間患い続けています。
病気になる前は、家族でハイキングにでかけたり、家でテレビの音楽番組を見ながら親子で踊ったりしていました。
でもリウマチが進行するにつれ、母はあまり身体が動かせなくなってきたのです。
ただ、リウマチになる前は全身でわが子を可愛がってくれていたと思います。残念ながらほとんど記憶にないのですが、僕の手を引いて歩いてくれたこともあるでしょう。
僕が思春期を迎える頃にリウマチになったので、それを機に、母とは手をつながなくなったと思います。
とはいえ、老いた母が外出する際は、僕が手を引くこともあります。リウマチなのでしっかりと手をつないで……というわけにはいきません。激痛が走るので。そのため、手を添えたり、肩を貸したりする程度なんですけどね。
つまり、僕が幼い頃はたくさん手をつないでくれたと思うのですが、かれこれ40年ほど、きちんと手をつないでいません。
そんな母の手をそおっと取って、手をつないでみました。母の手はとても弱々しく、リウマチを長年戦い抜いてきた手の指はグラグラです。「こんなに酷かったのか、これまでずっと頑張ってきたんだなぁ……」と、感じました。
どうして今まで母の手をもっと取ってやらなかったのだろうと後悔しながら、母の手の温かさ、優しさ、小ささを感じました。
弱々しい手ですが、これまで頑張ってきた母の勲章です。いつもありがとう!