知らなかった……。
ひな人形と五月人形、親や兄弟・姉妹からのお下がりは良くないのだそうです。
節句・伝統文化の啓発と振興のために活動している一般社団法人日本人形協会が、ひな人形の本来の役割を説明するマンガを公開しました。
ひな人形が、「女の子のためのもの」「娘の幸せと豊かな成長を願うもの」ということは広く知られていますが、その本来の役割を知っているという方は決して多くありません。そこで日本人に馴染みの深いマンガを用い、ひな人形の正しい知識の啓発を実施しています。
ひな人形のおさがりはNG。日本人形協会が節句人形の啓発マンガを無料公開
早速ですが、マンガはこちらからご覧いただけます。
http://www.ningyo-kyokai.or.jp/manga/
以下、マンガの内容を3つのポイントに分けて紹介します。
【1】ひな人形のおさがりを飾ってはいけない
マンガは小さな娘がいる夫婦の物語です。その母親が、自分が子どものころに用意してもらったひな人形を娘に譲ろうとしているところから物語が始まります。
「私が子どもの頃に飾っていたものだけど、十分綺麗だよね」
そんな両親の会話を聞いたひな人形たちは大慌て。夫婦の外出中にこっそりみんなで集まり話し合いをはじめます。というのも、ひな人形を娘に譲ることは、その本来の役割に反してしまうためです。
そもそも、ひな人形には子どもの身代わりとなって厄を受けるお守りの意味があります。したがって、母親のひな人形を娘に譲ることは母親の厄を娘に引き継がせることになってしまいます。ひな人形は、一人に一飾りずつ持つべきものなのです。
では、それをどうやって夫婦に伝えようか。集まったひな人形たちは知恵を出し合いますが、人間の前でしゃべることはできないため苦戦します。
【2】ひな人形は飾るだけでなく、積極的に触るべき
ふと、ひな人形たちはかつて母親の両親が書いた手紙を思い出しました。そこにはひな人形は娘のお守りであることが記されています。その手紙を読んだ夫婦はひな人形の本来の役割を知り、娘に娘のためのひな人形を用意することになります。
お母さんから手を拭いてもらい、自分のひな人形に初めて触れる娘。「ひな人形は触ってもいいの?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、ひな人形は直接触れることで自身の厄の身代わりになってくれます。むしろ積極的に触れるべきなのです。
ひな人形は飾るものというイメージがありますが、それだけでは本来の役割を果たすことはできないことがわかる内容となっています。
【3】役目を終えたひな人形は人形供養へ
娘のためのひな人形を用意することができ、一安心の夫婦。マンガはハッピーエンドを迎えます。
ところで、母親のひな人形はどうすればいいのでしょうか。しまっておく、処分するという方もいるかもしれませんが、本人が大人になって必要がなくなったひな人形は、供養してあげるのがおすすめです。
日本では、人形には魂が宿ると昔から考えられており、供養をしてくれる神社やお寺は少なくありません。また役目を終えた人形を供養するイベントも全国各地で実施されているので、そちらに持参するのもよいでしょう。
*参考:日本人形協会プレスリリース
五月人形もお下がりは使わない。兄弟がいる場合は、一人一体ずつ買う
五月五日のこどもの日、男の子向けの「五月人形」はどうでしょうか? これも同じく、親のお下がりは良くないそうです。
日本人形協会の「人形O&A」のページで解説が掲載されていました。
Q. お父さんの五月人形を子供に譲ってもいいの?
お節句は、その子が無事に成長するようにとのお祝いですから、基本的には、五月飾りもそれぞれに用意したいものです。
Q.次男、三男が生まれた場合は?
出来れば次男、三男にも、それぞれの五月飾りを用意したいものです。
しかし、もしそれが出来ない場合も、なにかその子自身のための五月人形などを買い求め、その健やかな成長を祈ってあげましょう。
なお、何かの事情で人形を保存できなくなったときは、全国各地の社寺で行われる人形供養(人形感謝祭)に持参し、若干の供養料を添えて納めるのがよいでしょう。
日本人形協会の「人形O&A」より引用
おひな様・五月人形は、その子だけのお守り
おひな様のルーツは平安時代。元々は簡単な人形に自分の厄を移して、川や海に流していたそうです。それがおひな様へと変わっていきました。
また、五月人形は武将が身に着ける鎧兜(よろいかぶと)ですよね。元々は武家社会から生まれた習慣で、武士が身の安全を願って鎧や兜を神社に奉納していたそうです。現代は武士の世の中で戦はありませんが、事故や病気から子どもを守ってくれるようにと願って飾ります。
このように、ひな人形も、五月人形も、子どもの災難を身代わりしてくれるお守り的存在です。災難を身代わりしてくれた人形を他人に引き継いでは行けない。そのため、その子限り(その子専用)になってしまうのです。
由来やルールはわかったけど、物を大切にしたい気持ちが芽生えてしまう
でも、ちょっと、悲しい気持ちになってしまいませんか。
だって、ひな人形や五月人形は、両親や祖父祖母が、想いを込めて買ってくれたもの。大人になってから我が子に受け継いではいけないというのは、なんとも切ないです。
「母のひな人形を受け継ぎたい」
「母娘で同じひな人形を飾りたい」
そんな親心・子供心が芽生えても、それは叶わないのです。
加えて、可愛らしいひな人形に、娘の災難を身代わりしてもらうという考え方にも、残酷さを感じずにはいられません。
僕はこれまで本来の役割を知らなかったので、今回の啓発マンガを読んで驚きました。
また、兄弟・姉妹で使いまわしてはいけない、というのも経済的に大きな負担になりますね。ひとセット数十万円しますし、簡易的なものでも数万円はします。しかも、兄弟・姉妹分を飾ろうと思ったら、家もそれ相当に広くないといけません。
「お下がりはいけない」「人数分飾らないといけない」というところで、すごくハードルが高い子どもの行事とも言えるのではないでしょうか。
どうせ代々使えないのであれば、今はモダンデザインの人形セットも売られているので、現代のインテリアデザインにマッチしたものを選ぶのも良いかもしれませんね。